公開日:2025年06月09日
「OJTのツールを整備する(1)」でOJTを効果的に運用するためのツールを分類しました。今回は、指導教材について解説します。
指導教材とは、教えるときに用いるすべてのもの指します。これには「業務マニュアル」や「テキスト」など、教えようとする内容が記述された文書と、仕事の道具や材料、サンプル、あるいは演習ツールなどが含まれます。
例えば、電話の受け方を実技も含めて指導する場合、電話の応対マニュアル、電話機、内線番号表、メモ用紙と筆記用具、そして練習用のケースなどとなります。集合研修と異なるのは、その職場で実際に使われているものを用いて指導する点にあります。
準備にあたっては、理解しやすくするため、実際の業務に近い環境にするため、といった2つの視点で検討するとよいでしょう。
指導教材で準備が大変なのは、教える内容を記述した文書です。例えば「販売マニュアル」やISOの「作業指示書」など、仕事の内容を記述したマニュアル類があれば、それを教材として用います。ここでは、こうしたマニュアル類を総称して「業務マニュアル」と呼ぶことにします。
「業務マニュアル」が整備されていれば、特別な準備はせずともすぐに指導にかかることができます。また、指導内容のバラつきも生じにくくなります。特に新人の指導や標準作業の指導を確実に行うためには、「業務マニュアル」は必須アイテムと言えます。
しかし「業務マニュアル」があっても、新人が読むには詳細で専門的すぎたり、逆に大まかな手順と基準値程度しか記述されていないなど、指導教材としては使いづらいものも少なくありません。
そのような場合、教わる側が理解するのにちょうどよい量と内容にまとめられた「テキスト」を別途に準備する必要が出てきます。この「テキスト」とは、指導内容だけをわかりやすくまとめた指導専用の解説資料を指しますが、覚える要素が多く複雑な仕事ほど、その必要性は高くなります。
しかし、こうした「テキスト」を作ろうとすると、30分程度の指導で用いるものでも、半日以上を費やしてしまうことがあります。そのため、適切な指導教材が蓄積されていない企業では、指導担当者がやる気があっても途中で息切れしてしまい、OJTのしくみも停滞しがちになります。
「業務マニュアル」にせよ「テキスト」にせよ、整備し維持していくには膨大な時間と労力が必要となります。逆に言えば、これらの指導教材を整備できているかどうかが組織の実力であり、それが人材の育成状況にも大きく影響を与えています。例えば「業務マニュアル」を整備したことで、新人営業の受発注までの平均期間が短縮したとか、派遣社員の定着率が大幅に改善したといったケースはよく聞かれます。
本気でOJTを機能させようと思うならば、この「指導教材」の整備に本腰を入れて取り組んでほしいと思います。
その場合、同じものを重複して作らないように、まず必要なものを洗い出し、どこで何を作るかを仕分けしておくようにします。全社的に共通性の高いものであれば、教育セクションが中心になって会社で1つだけ作るようにします。例えば「基本行動ガイドブック」のようなものがこれにあたるでしょう。
一方、職場ごとの個別性が高いものは、各職場で作成することになります。このとき、完全なものを一気に作ろうとせず、数年かけて地道にコツコツ作っていくことが完成に近づくコツのようです。
まず、必要な教材のリストだけを作成します。そのうえで指導頻度の高いものから順次手がけていきます。また1つの教材を作る際も、当面は目的と基本手順だけ、次に注意事項を埋め、その後細かな条件分岐を加えていくという具合に、段階的に充実させていくことことが望ましいでしょう。
完全な教材になっていなくても、指導場面で補足したり、本人にメモを取らせたりといった対応が可能なので、粗いままでも教材としての活用は開始できます。活用を始めれば動機づけにもなり、作業も進みやすくなるはずです。
以上、OJTのツールを整備するためのポイントについて、4回に分けて解説しました。
ぜひ参考にしてください。なお、当社では、指導教材や業務マニュアルについてもご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
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