公開日:2025年12月17日
これまで主に新入社員向けのOJTについて取り上げてきましたが、中堅以上の階層でのOJTのしくみについても取り上げてみたいと思います。
中でも「リーダー格への昇格者を対象としたOJT」と「新任管理者に対するOJT」のしくみを数回に分けて解説します。
ここでのOJTの対象層は、仕事に関しては一通り習熟し、あらためて教えることはないと感じられる層です。そのため、彼らを対象としたOJTのしくみなど必要ないのではないかという意見もあるかもしれません。
しかし、昇格や昇進をすると役割が変更になったり、新たな役割が追加されたりします。これらの役割は本人にとっては未経験のものであり、やはり新たな能力習得が必要なはずです。
特に、中堅層以上になって新たに習得すべき能力には、「判断力」を伴うものが多くなります。またその判断も、個別的な状況におけるものがほとんどです。これらは、数日間の集合研修や文献学習だけで習得できるものではなく、実践を通して培っていく必要があります。そう考えると、身近にいる上司が助言や指導を行うOJTが、どの教育手段よりも適しているといえます。
管理者の中には、このことを非常によく理解し、しくみがなくてもよく部下を指導できる人もいます。しかし、そのような管理者は多くはないでしょう。意識が十分でなかったり、必要性は感じていても実践できていない管理者も少なくありません。
そこで、より多くの管理者が、できるだけ少ない労力でOJTに取り組めるようなしくみを準備するほうが、OJTの実施率は高まってきます。また、上述したような、部下の指導に熱心な管理者でも、自分の経験を押し付けるだけで、必ずしも部下の成長に結びついていないケースもあります。そうならないようにするためにも、OJTのしくみの中で標準的な指導内容を提示しておくことが有効だと感じます。
ここでは、昇格者や新任の管理者に対するOJTについて、指導内容や指導方法よりも、しくみそのものに焦点を当てて、次回以降、解説したいと思います。