公開日:2025年12月18日
前回、中堅層以上を対象としたOJTのしくみについて、その必要性を解説しました。
まず、「リーダー格への昇格者を対象としたOJT」のしくみについて見ていきたいと思います。「リーダー格への昇格」といっても各社で人事制度が異なるため、どの層という例示がしづらい面があります。そこで、ここでは「実務担当者としての役割に加えて、職場リーダーとしての役割が期待される層へ上がった人」と位置づけておくことにします。
実際には、各社の人事制度により「何等級への昇格」「何職への昇進」「何グレードへの進級」などと個別に対象層を定義することになりますが、以後では一律「昇格」と使っていくことにします。
ここでの昇格は、それよって直属の部下が付いたり、職務権限が加わったりということまでは意味しません。多くの場合、このあたりの層では昇格したからといって職務内容が大きく変わるわけではありません。そのため、本人が昇格したことを強く意識するか、周囲から何らかの働きかけがない限り、昇格前と同じように仕事を続けてしまいがちとなります。そこで、この機会を捉えて集中的にOJTを実施することで、本人の意識と活動内容を変えていくことをねらいます。
リーダー格への昇格者を対象としたOJTと、新任管理者に対するOJTのしくみの概要は、以下のとおりです。
| 項目 | リーダー格への昇格時 | 新任管理者 |
|---|---|---|
| 指導責任者 | 直属上司(所属長) | 直属上司(例:部長) |
| OJT対象期間 | 1年 | 1年 |
| 使用シート | 職務比較シート(例) | マネジメント行動チェックリスト |
| 実施項目 | 目標管理制度における面談と期中支援 | 随時報告と四半期面談 |
| 報告形式 | 部門内レビュー | マネジメント実施レポート |
昇格後のOJTでは、昇格後の1年間をOJT対象期間とし、直属の上司が責任者となって指導にあたります。特別なしくみを新たに作るのではなく、すでにある目標管理制度などを活用し、それを通常よりも充実した内容で進めていくというイメージです。
このOJTでの主なねらいは、昇格前に比べて職務拡大を図っていくことです。拡大させていく方向は、担当業務や職場状況によっても異なりますが、今までの本人のやり方だけではうまく行かないもの、本人だけでなく周囲に働きかけないと成果に結びつかないものを職務や課題に加えるのが望ましいでしょう。
いずれにしても、上司からの要求レベルを思い切って高くしていくことがここでのポイントとなります。高い要求に応えようとすると、いろいろな問題が発生します。その問題の解決にあたる過程で、これまで使っていなかった能力を使う機会が生じ、未知の体験をすることになるかもしれません。それらによって、本人の成長を促していこうという目論みです。
しかし、新たに発生する問題を本人が独力で解決できるとは限りません。そのため上司も、本人の活動状況を常に意識し、相談を受付け、助言やサポートをする必要性が高まります。これによってOJTの機会も増えるでしょう。
こういった助言やサポートは、本来はすべての部下に対して必要なはずですが、現実には全員に対して十分な時間を取るのは難しいでしょう。そこで、特定の対象者の特定の時期に絞ってそれを実践していくようにします。
一方で上司の助言やサポートが特定の部下に集中すると、不公平感を抱く部下が出てくる可能性もあるかもしれません。しかし、公式のしくみとしてそれを行っていることを表明していれば、周囲の理解も得やすくなります。この点もしくみとして準備することの1つのメリットといえるでしょう。
その他、「効果を上げるための工夫」「部門内レビュー」については、次回解説したいと思います。