ナビゲートのロゴ
ナビゲート通信は主な更新情報をお届けするメールマガジンです。ご登録はこちらから。

下記はページ内を移動するためのリンクです。

現在位置

 ホーム > 気まぐれ歳時記 INDEX >新人のころの思い出 〜初月給編(2)〜果たされなかった約束

« Back | 気まぐれ歳時記INDEX |  Next »

2003年5月20日

新人のころの思い出 〜初月給編(2)〜果たされなかった約束

category : [仕事・職場

writer :[の]

新人のころ、「初月給で祖母に何か買ってあげたい」そう思ってました。前回「初月給編(1)」の続きです。

祖母は当時82歳。明治の生まれです。引っつめた髪をまげに結い、いつも着物を着てその上に前掛けをしてました。まるで磯野フネのような、典型的なおばあちゃんモードです。(そういえば最近はこうした装いをまったく見かけなくなりました。寂しい限りです)
そしてその祖母のために私が選んだのは、金の指輪でした。
たまたま宝石店の店頭で見かけ、私自身が気に入ったものでした。祖母には若すぎるデザインかもしれないとも思いましたが......。

ところが、意外にもこれが大喜びされました。あんなに喜んだ祖母の顔を、私は初めて見たように思います。もちろん、孫が初月給で買ってくれたということもあるのでしょうけど、「指輪」そのものをとても気に入ってくれたのは確かです。

それまでも、記念日などには何かにつけ祖母にプレゼントしてきました。起毛のベスト、折畳みのつえ、眼鏡ケース、遠赤外線の肌着、夜眠るときに肩が冷えないようにするための肩掛......。
こうした(老人っぽい?)品々と金の指輪とでは、祖母の反応はまったく違っていました。「枯れても女......」という言葉がふとよぎりましたが、もちろん口にはしませんでした。

「きれいだねぇ。いいねぇ。こんなのもらったの初めてだよ。」と、とうれしそうに指にはめてみて、ひとしきり眺めたのち、すぐに箱にしまってしまいます。
そして「おばあちゃんが死んだら、お前にあげるから」と顔を近づけてささやくのです。
「そんなこと言わないで、高価なものじゃないんだから普段してたらいいじゃない?」と言うと、 「もったいない、もったいない」と首を振ります。
指輪を箱の中の定位置に収めたら、包装紙も四角く折り畳み、それをリボンでくくって一緒に保管します。さすがに明治の人です。包装紙も粗末にしません。もちろんしまう場所は茶だんすの中と決まってます。

その後、私が帰省するたびに、
「これこれ、ちゃんと持ってるよ」とうれしそうに箱を出してきて、「きれいだねぇ。いいねぇ。こんなのもらったの初めてだよ」というせりふで始まり、5分もせずにまた箱にしまっては、例の「死んだらあげるから」で締めくくるのです。
こんなことが何度か繰り返されました。

祖母は90歳で逝きました。結局祖母は、あの指輪をトータルで何分間もはめていなかったと思います。
葬儀は盛大でした。子供が7人、孫が13人、兄弟その他親族だけを合わせても、それなりの人数になります。親族への形見分けも、大忙しの中でバタバタとさばかれました。 何が誰の元へいったことやらわかりません。
祖母の約束は結局果たされませんでした。あの思い出の指輪は今どこにあるのでしょう?
誰のものになっていても構わないので、そんな思い出があったことも知ってもらえたらよかったな、とちょっぴり残念です。

私自身忘れかけていた記憶でした。「初月給」という言葉をたぐり寄せた先につながっていた、祖母とのちょっとした思い出話です。


Comments:0

気まぐれ歳時記のご感想・コメントをお寄せください

Comment Form

コメントを表示する前に弊社担当者の承認が必要になることがあります。

この情報を登録しますか?

Trackback:0

TrackBack URL for this entry
https://www.navigate-inc.co.jp/MT-5.2.13/mt-tb.cgi/168
トラックバックされる際にはこの記事へのリンクをお願い致します

▲このページの先頭へ

最近のエントリー

過去分一覧(月別)

2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年

カテゴリー

執筆者一覧

お問い合わせ・ご連絡先
Copyright © 1999 - Navigate, Inc. All Rights Reserved.