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肩幅は広いが肩身はせまい今日このごろ


[よ] 子育て

私はどちらかというと大柄な体型で、少し細身の夫からは「肩幅広いね?」といつも背後から感心されます。ハンガーのようないかり肩で、よくいえばモデルのような肩です。が、着る服はどれもこれも肩幅が足りず、いつも肩の線が首側にずれこんで、見るからに不格好。
特に耐えられないのは、たまに和服を着るときです。美しく見せるため強制的になで肩を作ろうと、タオルを何本も肩に入れ矯正しますが、それでも肩の先がニョキっと上がっている姿は、情けないばかりです。

そんな私ですが、肩身のせまい思いをすることも少なくありません。
最近ベビーカーを乗せて電車やバスを利用し遠出をすることも出てきました。もう歩けるさくらですが、途中でしんどくなると抱っこをせがみますし、外出先で昼寝をするとその重みはずっしり。外出時の荷物もまだまだ多く、せめて荷車としても役立つため、どうしてもベビーカーなしで出かける勇気はありません。
しかし、ベビーカーは占有面積が大きく場所をとるので、電車などに乗ると非常に迷惑になります。それはよくわかっています。だからなるべく平日、通勤・通学時間を避けて、また急行ではなく多少空いている各駅停車を選ぶようにしています。
ある日のこと、横浜の我が家から東京の友人宅まで、電車を1回乗り継いで遊びに行くことになりました。
選んだのは平日の10時過ぎ出発、各駅停車の電車です。これなら、人と人が触れ合うほど混むことはないかな、みんなの迷惑にはならないかな、と思ったのですが。
乗り込んだときはかなり空いていて座席にも余裕があったので、ドアに一番近い席に座り、さくらの乗ったベビーカーを自分の目の前に置きました。ところが都心に近づくにつれ、どんどん人が乗り込んでいきます。乗り込んだ人は奥に入りたくても、ベビーカーのせいでなかなか入ってこれないようです。しかし、ベビーカーのタイヤと立っている人の足がぶつかってしまうため、容易に動かすわけにも行きません。私が立とうにも、バランスが崩れてベビーカーが倒れそうになるため、そうすることもできずじっと耐えるしかありません。さくらが大声で泣かず、おやつでどうにかいい子にしていてくれたのがせめてもの救いでした。
みなさんに申し訳ないな、でも車内にいる人全員に謝るわけにもいかないし……と下を向いたままでいたら、立っている人の言葉が上から聞こえてきました。
「混んでいるときに、まったく邪魔なベビーカーね!」
その声は年配の女性の声でした。
やはり、そうですよね。邪魔ですよね。ごもっともです。
でも、今の私はそうするしかなかったんです。電車を使わなくては目的地には着けないし、ベビーカーなしでの外出はまだまだ不安なんです。
当事者にならないと、そんな気持ちは理解できないこともよくわかります。だからその方を責めるわけにもいきません。面と向かって文句を言われなかっただけ、感謝すべきかもしれません。これまで通勤電車の中で、あまりの混雑で人と人がぶつかってしまい、激しい口論になっている場面を何度も見てきただけに、いつ自分がその立場になってもしかたないな、とつくづく感じました。
心の中でみなさんに謝りながら、それでもどうすることもできず、ついにぐずりはじめたさくらをなだめながらずっと下を向いていました。30分のなんと長かったことか!冷や汗がダラダラ流れていました。
でも、そんなときでも私の肩は相変わらず広く張っていたのでした。

私が住んでいる地域は横浜でも子供が多く比較的配慮されているせいか、近所を行動する範囲ではベビーカーが不便と思うことはあまりありません。しかしひとたび地域から出ると、子連れには辛いことも出てきます。
先日も電車で出かけたのですが、大きな駅なのにエレベーターの看板が見当たりません。駅員さんに「エレベーターはありますか?」とたずねたのですが、忙しかったのでしょう、「ありませんよ」と冷たく言い放たれてしまいました。文句は言わせませんよ、と言わんばかりです。
しかたなく階段をのぞいてみると、ホームへ下りる階段は長く利用者も多いため、私がベビーカーをかつぎ、さくらを一人で階段を歩かせるのは非常に危険です。
ここでさくらがこけて大怪我でもしたら取り返しのつかないことになるな、私も階段をふみはずしてしまったら……。怖い想像がどんどんふくらみますが、自分でなんとかしなくては……。
不安そうなさくらを元気付けて足を踏み出したかけたとき、「お手伝いしましょう!」と親切に言ってくださる女性がいました。その方は改札からホームへ上がったところだったようですが、反対方向の改札へと下りる私をわざわざ手伝い、重いベビーカーをかついでくださったのです。
おかげで私はさくらを抱っこし無事改札に到着。お礼を述べると、その方は微笑み、忙しそうにまたホームへ上がっていかれました。
私は心の中で手を合わせるしかありませんでした。

健康な人が生活していくには、エレベーターがあろうがなかろうが、スロープがあろうがなかろうがたいした問題ではありません。しかしいざ体調を崩したり、ベビーカーや車椅子などを使用しなくてはならなくなったとき、世間ではまだまだ肩身のせまい思いをしなくてはならないことが多いようです。
出産前は、私も公共の場で赤ちゃんが泣いたりベビーカーで場所を取られたりすると、必ずしもいい印象はありませんでしたので気持ちはよくわかります。そして、その立場になってはじめて理解できることも少なくないようです。
飲食店などは、子供が騒いでも許されるような時間や場所を選ぶことができますが、交通手段はどうしても使わざるを得ない状況が出てきます。
少しずつでもいいです。すべての人にやさしい世の中になることを心から祈るばかりです。
そうなるまで、私の肩幅は広いままですが肩身はせまく、それでもたくましく生きるしかないようです。

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