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2005年12月15日

大金を拾う

category : [日常生活

writer :[の]

昔から落とし物や忘れ物が多いほうです。
これまで何度も財布やバッグをなくしましたが、幸運なことにほとんどが戻って来ました。世の中物騒になったとはいえ、まだまだ捨てたもんじゃないなと感謝感謝です。

そんな私も今年は一度も落とし物をしていません。逆によく物を拾った1年でした。
ビジネス手帳、名刺入れ、財布......。(もちろんすべて届けていますよ)
その他、拾い物ではないけど、頭から血を流して倒れている人を発見し通報したことが1件。あの時はしつこく事情聴取されましたっけ。

実は先日も、道で財布を拾いました。
その日の夜、私は用事があって家路を急いでいました。財布を拾ったのはその道中です。
そのまま交番に届けるべきでしょうけど、交番は今来た道と反対方向に戻らないといけません。家まではあと少しです。
まぁいいや、とりあえず家に帰って用事を済ませ、明日の朝にでも届けようと思っていました。

ところが、家に着いて改めて財布を見てみると、ちょっとびっくり。
取り出して数えたわけではありませんが、ちらっと見ただけでも万札が20枚くらいは入っていると思われます。カード類もびっしりです。
ああ、この忙しいときに厄介なものを拾ったなぁ、なんでこんな物を落とすかなぁ、と思うのですが、人のことを言えた柄ではありません。

これを落とした人は、今ごろきっと顔面蒼白で生きた心地がしていないでしょう。その気持ちはよーくわかります。
私としても、こんな大金を長時間持っているのは落ち着きません。
もし連絡先がわかれば、とりあえず電話して拾ったことを伝えようかとも思ったのですが、財布の中を下手にいじったりして余計な指紋をつけてはいけないし、ただでさえ個人情報がうるさいこのご時世、めったなことはできません。

コートも脱がずにしばし自問自答した揚げ句、結局は今来た道を戻って駅前の交番まで届けることにしました。やれやれ、何のために早く帰ったんだか。

交番に着いたとき、警官は皆出払っていて誰もいませんでした。
しばらく待っていると、20代前半くらいの若い男性が2人入ってきました。しーんとした中、3人で警官の到着を待ちます。
5分、10分、20分、警官は一向に戻りません。
隣の2人は、交番を出たり入ったりしています。その二人の会話が聞くともなしに聞こえてきました。
「来ないなぁ」「まいったよなぁ」「ダメだろうなぁ」
2人ともがっくりした様子です。まさか財布を落とした本人とか?......そんな、まさかね。

沈黙の中、さらに数十分経ちましたが、警官はまだ戻りません。
そのうち、2人はまたぼそぼそと話始めました。
「で、いくら入ってたの?」
「それがさぁ、20万以上だぜ。もう母ちゃんに会わせる顔がないよ。オレ何て言ったらいいのか......」
「カードも?」
「カードも免許証も、とにかく全部入ってたんだ。やばいよ」
「ラ○タになんか寄らなきゃよかったな。あの隣の路地だぜ、きっと」
「出てこないよな、普通」
「だよなぁ、もう絶望的だよ」
「......」

もう私の耳は2人の会話にくぎ付けでした。「まさか」が段々「確信」に近づいてきます。時間帯といい場所といい、財布の持ち主に違いありません。
私は笑いが込み上げてくるのをやっと押さえて、心の中で2人の会話に加わりました。
「ふっふっふ。ほ〜ら、あなた達の探し物はここにあるわよー」と。
でも私は素知らぬ顔をして本を読んでいました。

警官を待ってもう1時間近くになります。
しびれを切らした1人が「オレ、先に行ってるから」そう言って出て行きました。
交番の中には、財布の持ち主(であろう人)と私と2人だけです。今思えば110番に電話すればよかったのかもしれませんが、その時は思い至りませんでした。私とその彼は辛抱強く待っていたのです。

隣人の心中を思うと心から同情するのですが、半分は面白くてしかたありません。
『この人、私が拾ったと知ったらどんな顔するだろう』
地獄で仏、その瞬間をイメージするとワクワクしてきます。
私も何度もそういう場面に遭遇してきましたが、いつも地獄側にいたので、今回はずいぶん余裕です。
ついでに、お礼を申し出られたときの台詞まで考え始めました。
「いえいえ、お礼は結構です。そのかわりナビゲートのサイトを見てください、って言おうかな、うんそうしよう」などと妄想が膨らみます。

それからさらに数十分。私もいい加減帰らなくてはいけません。
万一本人でなかったら、と思うとドキドキしましたが、私は心を決めて声をかけることにしました。
「あのぅ、どうされたんですか?」
彼は振り返ると率直に答えました「財布を落としたんです」
ビンゴです。私は続けて聞きました。
「どんな財布ですか?」「黒の2つ折りの」
「失礼ですが、お名前は?」「○○ △△です」
刑事でもないのにこんなことを聞く私も私ですが、それに素直に答える彼もまた彼です。

「○○ △△さんですか。ひょっとしてこんな感じの財布ですか?」バッグからチラっと財布をのぞかせると、彼の顔が一瞬で紅潮し、パッと明るくなりました。
「あーーーっ!それですそれですー!」
やっぱりね。でも簡単に渡すわけにはいきません。
「何かお名前を確認できるものは入ってますか?」
「免許証、免許証が入ってますから!どうぞ見てください」
「では失礼して」と免許証を取り出す私。確かに○○ △△さんとあります。でも、もうちょっとじらしましょうか。
「えーっと、生年月日をおっしゃっていただけますか?」
「○年○月○日です!!」
はいはい。もう間違いないでしょう。私は財布を彼に手渡し「中身をちゃんと確認してくださいね」と伝えましたが、彼はもう「いやもう、とにかく出てきてくれて。ホントにもう......、ありあとあしたーっ!」そう言って頭を深々下げて締めくくられてしまいました。
お礼の話は出ませんでしたが、まぁいいでしょう。私は「じゃあ、どうも」と言ってその場を去りました。
楽しみにしてた瞬間は意外にあっさり終わりましたが、とにかくよかったよかった。

○○ △△さん、もしまた縁があってこのページを見ることがあったら、お礼はいらないから時々サイトを見にきてくださいね。

年末に向けて、小金を持ち歩く機会も多くなるかもしれません。みなさん、落とし物、置き忘れ、酔いつぶれには、くれぐれも気をつけましょう。


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