遠距離介護1年生
親の老いはまだ先のこと――と勝手に思い込み、両親への孝行は後回し、まだまだ甘えてばかりいました。
しかし昨年、母が急逝し、父は独居老人になってしまいました。
これまで家事はほぼ母任せだった高齢の父が、今さら一人暮らしなどできるのか……。
兄と私、2人とも遠方に住んでいるため、有事の際にもすぐ駆けつけることができません。
さあ、どうする……。
人生で最大級の悲しみを紛らわせるかのように、父の生活環境の整備を家族みんなで整えていた矢先、今度は父に胃がんが見つかりました。
幸い早期発見で症状は落ち着いていますが、高齢者の退院後の独居生活は不安ばかり。
入院の影響か、歩き方も危なっかしい限りです。
「今後は父の一人暮らしは無理だろう。子どもと同居するか、どこか施設を探すか……」
途方に暮れる私に、看護スタッフがこんなアドバイスをくれました。
「同じような環境の方でも、介護認定を受けて、地域に見守られながら一人暮らしを続けている方はいますよ」
なるほど。
要介護の対象者は、「比較的重度で、食事や排泄などに常時介護が必要な人」というイメージでしたが、要介護の区分は7段階あり、常に介護を要する「要介護5」から、日常生活の基本的なことは自分でできるが部分的な生活支援が必要な「要支援1」まで幅広いとのこと。
父は比較的軽度ではありますが、対象になるかもしれません。
祈るような気持ちで介護申請を行い、無事「要支援1」に認定。
認定後は、驚くほどてきぱきと物事が進みました。
帰省すると、見慣れない手すりが部屋のあちこちに!さっそく介護保険の恩恵を受けているようです。
私の帰省に合わせて、ケアマネージャーさんとの打ち合わせもお願いしました。
まずはごあいさつ。そして改めて、切実な心配事を並べます。
・突然独居老人になってしまい、家事もおぼつかいないこと。
・家族が遠方に住んでおり、常にそばにいれないこと。
・足腰が弱り、浴槽をまたげず、真冬でもシャワー浴になってしまうこと。
私の不安な気持ちに寄り添いながら、ケアマネージャーさんは、父へのこれまでの聞き取りや希望を元に練り上げたケアプランを、一つひとつ丁寧に説明してくれました。
ド素人の私には内容を十分理解できませんが、その対応はとても心強く、「地域のみなさんにしっかり見守ってもらえる」という安心感につながりました。
兄も私も遠方に住んでいるからこそ、ケアマネージャーさんと密に連絡を取り合って。
いずれ私自身も介護を受ける側になる日が来るでしょう。そんな将来に向けても、よい勉強になりそうです。
デイサービスも始まりました。
送迎付きで、おいしい昼食があり、安心・安全な体制の中で入浴もできる。さらにリハビリ指導まであるそうで至れり尽くせり。
「どう? 楽しい?」と聞くと、
「まあまあかな。保育園児みたいに、お迎えバスに乗って行ってくるよ」
と、照れ隠しの奥の声は、まんざらでもなさそう。
人とのコミュニケーションが大好きな父にとって、単調になりがちな一人暮らしの中で、よい刺激にもなっているようです。
![]() |
![]() |
| ケアマネさんの名刺は父の命綱 | リビングのど真ん中に設置された手すり棒。 父のいい相棒です。 |
![]() |
![]() |
| 玄関の幅の半分を占めるがっちりした手すり。 | 近くのリハビリ教室にも通う父。 名札をかけた笑顔は大きい保育園児です。 |








