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日本企業のOJTは行き過ぎたマイナス文化なのか?

JB PRESSに「働くところがなくなるOJT育ちの社員たち」という記事が掲載されました。
記事自体は論旨に飛躍も多く、個々の指摘を取り上げて反論するまでもありませんが、OJTがどういうものであるかを考えるうえでいい素材だと感じます。


記事では「行き過ぎたOJT」という言葉を使い、それが「マイナスの文化」だと結論づけています。その理由として、次のような指摘を行っています。
・OJTで日本流、自社流を徹底的に教え込まれる。
・OJTで教え込まれた知識や技能は、自社では通用しても他社では通用しないことも多い。
・自社流が身に染みている「優秀な社員」ほど、海外では通用しない可能性が強い。


そこでまず、日本企業におけるOJTの現状から押さえていきたいと思います。
日本企業では、新人が配属されると、ほとんどどの職場でも、上司や先輩が何らかの形で仕事を教えます。この点は日本に限らず、世界中どの職場でも同じはずですが、日本企業では他国と比べると「よく教えている」ほうなのかもしれません。
しかし、伝統的にみると、日本の職場は「教えない文化」のほうが主流で、長い下積み期間に耐えた人だけに門外不出の技能を教えたり、「仕事は見て覚えろ」といった育て方をしていました。これだと人材育成に時間がかかり、育つ確率も低いため、戦後、製造現場を中心にアメリカ型のジョブ・インストラクションが導入されてきました。しかしそれも、初期段階の単純技能に関することが中心で、まとまった仕事の指導は上司任せになっていました。


そうなると、どうしても職場によって指導するしないにバラつきが出ます。また指導熱心な上司ほど、仕事も忙しいので、部下の指導が場当たり的になってしまいます。そこで大手企業を中心に、体系的なOJTのしくみの導入に取り組んできましたが、OJTより業務が優先されるため、OJTの実施率はなかなか上がっていないのが現状です。
OJTを定着させるには、シートやマニュアルを準備したり、OJTリーダーの研修を実施したりするなど、もろもろのツールやフォローが必要となりますが、そこまでできる企業はそれほど多くはありません。そのため、日本全体で見ると、体系的なOJTを受けながら育った人の比率は、弊害が指摘されるほど高くはありません。実際に管理者研修などで聞いてみても、「俺達のころは仕事は自分で覚えた」という声をよく耳にしますし、OJTという余分な仕事が増えることに抵抗感をもっている管理者が多いのが実態だと感じます。
企業内教育に関係している人からすると、批判の対象にされたような「行き過ぎたOJT」どころか、「OJTがなかなか浸透しない」ことが問題だと捉えているはずです。


次に、「OJTで日本流、自社流を徹底的に教え込まれる」「OJTで教え込まれた知識や技能は、自社では通用しても他社では通用しない」という点を考えてみたいと思います。先ほど、体系的なOJTを受けながら育った人の比率は高くないと書きましたが、長期的な関係が継続する日本の職場では、形式的なOJTに留まらず、酒の席で薫陶を受けたり、お客さんから教わったりしながら仕事を覚えることができました。そういう世界では、確かに企業特有、業界特有の人材が育っていたとは思います。
ただし、そういう人が他社で通用しなかったという事実はありません。むしろ即戦力として重宝するので、中途採用をする企業では業界出身者を優先して採用してきました。


しかし、技術や業界構造の変化が激しくなると、そうした育て方だけでは自社内でも通用しなくなる人材が増えてしまいます。そこで企業は、単に現在の仕事を覚えるだけでなく、もっと基礎的な技術や体系的な知識を教える必要を感じ、その手段としてきちんと計画されたOJTを浸透させようとしてきました。
これには、批判もあります。一般的な知識なら集合研修でやるべきだとか、教える側が体系的な知識を持っているわけではないという意見です。しかし、即効性が高くない知識教育に時間とお金を投入できる企業はそれほど多くはありません。そのため、どうしても自己啓発とそれをガイドするOJTに頼らざるを得ませんし、そうした幅広いOJTを促すことで、教える側にも知識の再整理や新しい技術の学習を促す効果もねらってOJTを活用してきました。
つまりOJTは、社外で通用しない個別専門的な人材で留まってしまうことを防止する手段としての機能を果たしているのです。


今日の日本の職場では、単純な仕事は機械化や非正規化が進み、正社員が担う仕事は専門的で幅広い知識が必要なものばかりとなっています。また、安全、品質、セキュリティ、コンプライアンスなどからの要請が高くなり、自社の規程や業務フローを踏まえていないと仕事ができなくなってしまいました。
ひと昔前に比べると、新入社員が覚えなければならないことは増大し、OJTなしでは戦力にならなくなってきています。そのため企業では、ベテランの社員が10年、20年とかけて身に付けてきたことを、OJTに限らず、集合研修やマニュアルなどのいろいろな手段を組み合わせて、何とか数年で習得させようと努力しているわけです。
こうした努力をしている企業に、他社から来た人がすぐに通用しないのは当たり前です。つまり「OJTで教わったことが他社で通用しない」というのはまったく逆で、OJTを軸として人材を育成してきた企業に入ると「簡単には追いつけない」と捉えるのが正当だろうと思います。


また、OJTが自社でしか通用しない知識や技能しか教えていないという事実もありません。OJTでは、確かに早期戦力化を意図した面は強くあります。しかしむしろ、目先の業務習得だけで留まらないようにするためにOJTをしくみとして導入し、その中で大きく育てる仕掛けをしています。その主なものを挙げてみます。
・基礎的な知識や技術・仕事の背景などをきちんと教えること
・仕事の身に付け方、学習の仕方を教えること
・課題を与えて問題解決力を身に付けさせること
・本人のキャリア形成を意識し、支援すること


職場単位でみると、こうしたOJTへの取り組みの程度は、決して高いとはいえません。しかし、意識してOJTに取り組むようになるにつれて、自社流に留まらない指導が増えているはずです。
育成熱心な上司に多い口癖は「今は必要なくても将来必ず生きてくるから」です。技術分野の上司は基礎的理論を学べと教えていますし、営業の上司はマーケットを見ろ、他業界に目を向けろと教えます。管理部門の上司は、現場を見ると同時に法令に当たれ、システムを覚えろと促します。そして海外勤務の経験のある人は、自分の体験を踏まえて、海外に出ると必要になると感じたことを熱く語ります。
身に付く知識や技術が自社流だけに偏りがちとなるのは、目先の業績だけを追いかけている企業であって、その弊害を打破するために多くの日本企業がOJTに力を入れているというのが正しい見方だと思います。


さて、冒頭で紹介した記事では、「日本の労働市場は流動性に乏しい」ことや「(入社前の)若者も(海外へ)チャレンジをしたがらない」ことも、企業のOJTが原因だと論じています。ここまでくるとまったく濡れ衣だと思いますが、少し触れておこうと思います。
前者については、労働市場の流動性が低く、内部昇格が中心であることがOJTを促進している面はありますが、上述してきたとおり、OJTが流動性の阻害要因であるとするのは無理があります。そればかりか日本の企業は、OJTを自社の中だけで完結させずに、退転職後も役立つように、ジョブカードの普及にも協力しています。
後者についても、企業がOJTを行っていることとはまったく無関係で、就職活動をはじめたばかりの学生は、OJTという言葉すら知らない人がほとんどです。


最後になりますが、OJTは「行き過ぎたマイナスの文化」などではなく、グローバルで活躍できる人材を育成するためにも、他の教育施策とあわせて、もっともっと本気で取り組むべきプラスの文化だと思います。
記事の中では、アサヒグループホールディングス社の海外研修制度を「行き過ぎたOJTの弊害を克服するためのプログラム」と紹介しています。とても良い制度だと思いますし、アサヒグループホールディングス社には敬意を表します。
ただ、こういう制度は大手企業では古くからありますし、こうした制度で対象となるのは抜擢された一部の社員ですので、これをもって社員教育全体の変化を語れるものではありません。むしろ、こういう先進的な教育制度を持っている会社は、OJTに関してもしっかりした制度を設けて取り組んでいるはずですし、いろいろな角度から総合的に人材育成を行っていることを見逃すべきではありません。

文責:伊藤弘二朗

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