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甘粛省に行くその4


[ち] 旅行・海外生活

拉卜楞に2日間滞在した後、さらに南の「瑪曲」という所へ行きました。車で6時間の山道です。
舗装してあるのに砂利道のようにがたがたしていて、常にお尻が飛び上がっている状態でした。
頭を天井にぶつけたり、振動で背骨の芯がずーんと痛いことも何度もありました。
そして何より辛かったのは砂ぼこりです。
窓を閉めてもどこかが壊れているのか、車中に砂が舞っています。 スカーフで喉を覆って頭もぐるりと包んで、さらに帽子を深く被っていました。まるでアラビア人のようです。

「瑪曲」は標高4000メートルです。 日本の富士山は3776メートルだからそれより高い位置にいることになります。
町に入ると日に焼け、砂ぼこりにまみれたチベット民族がたくさんいました。
綿入れのような分厚い服を着て、腰の辺りをたっぷりと膨らませ、帯で結んでいま す。ひざ丈まである袖を片方は腕を通さず、はだけてぶらぶらさせながら歩き、 目はぎろぎろとするどい感じでした。

さて、瑪曲に到着したその夜中2時近くになって、大きな地響きのような音で目が覚めました。
誰かが部屋の扉を体当たりしています。隣に寝ていた友人も目を覚まし小声で私を呼びました。
「なんだろう?」しばらくして止み、今度は足音がガツガツガツ......
どうやら革靴の大男が私たちの部屋の前をうろうろしているようです。部屋の明かりのスイッチは 扉の外にあったので電気をつけることもできず、じっとベットの中で身をちぢこませていました。
そのうち足音も消え30分くらいたったころ「先生に電話する?」と友人が言い出しましたが、 まだ外にいるかもしれないのでドアを開けることはできません。
「このままでも怖いし、どうしよう」と話し合ううち、 今日街に着いたとき運転手が言っていたことを思い出しました。
「この街は女の人にとって危ない、今日ここに泊まるのか?夜は安眠できないだろう」
そういえば、私たちは寝る前にお湯をもらいに行ったのですが、すぐにはもらえず、後で部屋にお湯を届けるというので部屋番号を言いました。 その際、向こうが聞き間違えるので何度も大きい声で言わされました。そしてそこには土地の男性がなぜか来ていました。
まさかその人が......
考えれば考えるほど怖くなってとうとう先生に電話をしました。が、寝ているのか出ません。
しかたなくクラスの男の子に電話をしたら「また何かあったら電話して、大声で叫べ」と言われました。
結局私たちは朝方まで眠ることができませんでした。
夜が明け皆に話しましたが「酔った人が部屋を間違えたんじゃない?」と先生は取り合ってくれません。
確かに明るい中で話しても怖さは伝わらない気がします。 あのしっかりした足取りは絶対に酔った人ではなかったのに。

民族衣装を着て馬を乗りこなすチベットの遊牧民族。広い草原の中で羊と牛を飼いテントの中で暮らす彼ら。
すごく憧れを寄せていた私ですが昨夜のことと実際ここへ来て彼らの態度を 目のあたりにし、すっかり印象が変わってしまいました。
私たちが絵を描いたり写真を撮ったりしていると、馬やバイクを私たちの鼻の先ぎりぎりで止めてじゃまをしたり、 ぴったりくっついてきて絵を見ようとします。
またスケッチブックを何も言わずに取り上げたり、などと失礼なことばかりしてきました。
しかしこれは文化の違いなんだと自分に言い聞かせています。 チベット族が悪いと決めつけたくありませんし、そんな人は一部かもしれません。
それにチベットへ行ったらまた違ったすばらしい体験ができることでしょう。

さて、今回の写生旅行は草原を車で移動することがとても多かったのですが、それで困ったのは やはりトイレです。
(トイレの話が多すぎでしょうか?!でもこれは真剣な問題なんです)
トイレ自体がないのです。
そこで車から下りてちょっと離れたところで何か物の後ろや小高くなった土の影で済ますしかありませんでした。
しかしこれが案外心地が良いものでした。たとえトイレがあっても汚くて虫がわいていたりすることもたびたびです。
それに比べたら壁のない大草原にお尻を出すのはさわやかなものです。
恥ずかしさを忘れればですが。

中国の地図(東方観光局のサイトへ)

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