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仕事に対するプロ意識

取り立て業務のOJT

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会社役員(男性)  2006-09-11

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取り立て業務のOJT

もう15年ほど前になるが、私が営業マンとして某商社に勤めていた時の話である。
当時、新卒で入社したばかりの私は、担当していた顧客数がまだ少なかったということもあり、新人特有の恐いもの知らずな日々を過ごしていた。

『売上伝票を経理に提出すれば顧客に請求書が送られ、支払日が来ると半自動的に代金が振り込まれる』。この法治国家において、そんな事は「自動販売機にコインを入れればジュースが出てくる」くらいに当たり前の事なんだという認識しか持っておらず、ましてや自分の担当顧客が「ジュースを出してくれなかった」、もしくは「ジュースを出さずに自分で飲んでしまった」といったチンパンジー並の愚行を犯すような事態は想像もしていなかった。

だが、入社してしばらくすると売上の増加に比例して徐々にグレーな顧客層も増し、やがてついには某顧客に怪しい兆候が現れる。
何度も請求書を送付してみるものの、一向に代金は支払われない。
連日事務所に電話をかけても誰も応答しない。
もちろん直接事務所に足を運んでも常に誰もいない。
そして、この会社が支払いから逃げている、もしくは倒産してしまった事が確実となったのは、先方の社長の携帯と連絡がつながった時であった。
電話がつながり私が名乗った瞬間、いきなり一方的に通話が切られたのだ。それ以降、番号表示・非表示を問わず電話にはまったく出てもらえなくなった。

もしこれが小さい額の売掛金ならば新人の私でもそれほど緊張はしなかったと思う。「手持ちが無い」と言いながら支払いを渋る客に、何とか頼み込んで集金してくるくらいの事ならば日常的にこなしていたからだ。
ところが、この時の売掛金は少し高額すぎた。
当時はバブルがはじけた直後だったという背景もあり、業界的にも未払金の発生が日常化していたものの、この時は私だけでなく本社の役員達も顔面蒼白になるくらいの金額だったのだ。
そして私には、
「トラブル処理を専門とする役員を派遣するので、毎日同行してキミもやり方を勉強するように」
との業務命令が下される。
つまりは、取り立て業務のOJTである。

その後すぐ、私が配属されていた営業所へ、ダースベイダーのテーマソングをBGMにこの役員がやってくる。
彼の到着を緊張しながら待ち続けていた新人の私は、さながら帝国軍の歩兵、ストームトルーパーといったところか。
ところでこの役員だが、誰が最初に言ったか知らないが『取り立て一筋50年』がキャッチフレーズで、見た目は「派手な色のスーツ」、「広く開いた胸元には金のネックレス」といった"大人的やんちゃ"なファッションがチャーミングなご老体である。
頼まれると他社の売掛金回収業務にも喜んで参加してしまうほど勤勉な方として、当時の業界ではその名を広く知られていた。
当時既に70は超えたお歳だったが、説教癖・独り言が平均的老人以上に多い方だったので、新人でしかも今回大失態をやらかした私は、彼の愛の説教づくしで初日から既にお腹いっぱいだ。

さて、売掛金の回収プロジェクトだが、まずは社長の自宅を突き止め、もし誰もいなければそこを張り込む方針が決定される。
ズブの素人の私はこの時、
「訴訟とか、差し押さえ手続きとかはしないのでしょうか?」
と平凡な質問を投げてみたのだが、
「そんな手間やお金のかかる事はまだしなくていい。まずは『困った時はお互い様』の温情精神で、事情を聞いて話し合う事から始める。それで解決すれば話は早いし楽だ。」
とのご教示をいただく。
さすがこの道50年のベテラン。仕事に余裕が感じられるご意見である。

同日の午後、謄本からあっさりと自宅が割れた為、二日目は早朝から記載された住所を訪問する。
自宅といっても団地の一室なのだが、呼び鈴を鳴らしたものの誰も出てこない。自宅周辺では他の取り立て屋さんの姿はまったく見なかった為、「あちこちに借金があるわけではないようだから、いずれ自宅に戻る時もあるはず」といった役員の予測の基、車の中でしばらく張り込むことに。
しかし夜中になっても誰も自宅に戻る様子は無く、一度出直すこととなる。

翌日は日曜で、本来ならば一週間で唯一の休息日となるはずだったのだが(当時は週休2日の企業がまだ少ない時代だった)、この役員に対し、「週明けからまた頑張りましょうか!」などと進言する勇気どころか発言権すら持たなかった私は、疲れた体を引きずってまたお仕事に励む事となる。
今度は夜の時間に絞って遅めに訪問するが、相変わらず呼び鈴には反応が無い。
その時点で私はまた留守だと思ったのだが、電気メーターを見た役員の目には鋭い閃光が走る。
「昨日見た時よりメーターのスピードが少し速いな」
とボソリ。
どうやら、今日は誰かが中にいるものの居留守を使っているようだ。
さすがベテランである。
『取り立て一筋50年』の文字が彼の背中に浮かび上がるのを一瞬垣間見た想いだ。

しかし、そこからの役員の行動には度肝を抜かれた。
突然、 「ゴラァ!いるのは分かってんだ!出てこいや!!」
と叫び、とても70を越えているとは思えないほどの身のこなしで、何の躊躇も無くドアをガンガン蹴り始めたのだ。
『取り立て一筋50年』の本領を発揮し、もはやバーサーカーと化してしまった役員を私はただただ呆然と見ている事しかできなかった。

やがて誰も出てくる様子が無いと判断すると、隣りの住人の部屋の前に移動し、おもむろにその部屋の呼び鈴を何回も鳴らす。 何事かと恐る恐る出てきた隣の(ごく普通の)主婦に向かって、彼はまたとんでもない行動に出る。
「すみませんねえ!隣りの方がウチの代金をお支払いいただけないんですが、留守みたいなんですよ!おたく何か知りませんかねえ!」
と、団地中に聞こえるほどの大声で隣人の恥をここぞとばかりにバラす。

そうこうしているうちに、流石にこの状況に根を上げた社長の奥さんが天の岩戸からようやく出てきた。 しかも当然といえば当然だが、かなり怒ったご様子で。
しかしそんな相手の怒りはまったく気にも留めない取り立て一筋50年。
「旦那はどこよ?コソコソ逃げ回ってるんじゃないよ!」と一喝。
どうやらこれが彼の言っていた「困った時はお互い様の温情精神で話し合い」という事になるらしい。 色々と勉強になる。

ようやく観念した奥さんが社長の携帯に連絡を取り、電話を代わってもらい交渉開始。 交渉は多少難航したものの、家族が置かれた現在の状況を奥さんから聞いていたこの社長、流石に最終的には観念して、その後は分割ながらも何とか我々は全額を回収する事に成功する。
正に中島みゆきの名曲『ヘッドライト・テールライト』でもBGMに流したくなる瞬間であった。

後にも先にも私がナニワ金融道の世界を地で体験したのはこの1度きりだったが、戦後の日本を経済大国にまで押し上げた世代のパワーはやはり侮れない。
こういった強引な取立ては現在は貸金業規制法により禁止されているわけだが、あの気概、プロ意識は見習うべきところがあり、その後の社会人としての自分にもそれなりに影響を与えた事は確かである。
特に、「残業が多いので」とか、「他にも自分に向いた仕事がありそうなので」といったプロ意識に欠けた理由を基に転職を繰り返す昨今の若者を見るにつけ、あの世代との仕事に対する姿勢のギャップを感じずにはいられなかったり、「いや、実は自分もそんなもんだったかも......」と、昔を思い出し反省もしてみたり。

*現在は「貸金業法(21条)」にて、強引な取り立ては禁止されています。


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