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5Sに対して、中間管理職が表面的には理解した態度を取っているのですが、腹の中ではやる気がないのが目に見えるのです。どのような対応をしたらよいのでしょうか?

50人程度の小企業ですが、私は先月から取締役として途中入社した者です。
会社は現在野放し状態で、これを立て直すには5Sしかないと思っています。
ところが、中間管理職(部長、課長級)が表面的には理解した態度を取っているのですが、 腹の中ではやる気にならないのが目に見えるのです。
どのような対応をしたらよいのでしょうか?

5Sが進むかどうかは'幹部(あるいはトップ)の本気さ'にかかっている、とよく言われます。
おそらく貴社の中間管理職の方々は、本気でやらなければならないと感じておられない状況なのだと思いますが、この本気でない人に本気になれと訴えかけてみ たところで、ますます表面的に合わせるようになるだけ、という難しさがあります。
人を本気にさせるには、第三者から言われるのでなく、本人が自分自身で必要だと感じ、自分の口から「やろう」「やらなければ」と言わせるしかないのだろう と思います。

ところで、質問者の方も他の方々も同じ現場を見ているはずなのに、質問者の方には「野放し状態」で問題だとうつり、他の方々はそれほど重大視し ていないような状況が、なぜ起こるのでしょうか?
おそらくこの両者では、どうあらねばならないかという基準に差があるのだと思います。
質問者の方がイメージしているあるべき管理水準に照らすと現状は非常に問題だと感じられ、長くその現場にいる方には普通の(いるもの)状態であり、特に問 題とは感じられないのでしょう。そのため、いくら訴えかけても本気の行動が生まれてこないのだと思われます。
つまり、中間管理職の方々を本気にさせるには、現状が問題であることを強く認識していただくことが第一歩になります。

とはいえ、それも一筋縄ではいかないところがあります。
問題認識が不十分な方は、自分が不十分であることを認めません。「そんなことは十分わかっている」けど、「他にもやらないといけないことある」と言い、 「もっと大切なことがある」と言われるでしょう。
あるいは、自分はわかっているけど「周囲にその気が無い」「今の処遇の中でそんなことまでやってられない」と問題を転換されるかもしれません。それこそ何 か大きなトラブルやクレームが発生すれば問題の認識もできるのでしょうけど、それでは手遅れです。
しかし、誠に残念なことに即効性のある解決策はないのかもしれません。

私どもが5S活動をお手伝いさせていただくケースでは、多少まどろっこしいかもしれませんが研修という形態を利用して、少しずつでも一人ひとり の問題認識を深めていただくよう働き掛けていきます。研修の中でやっていることは難しいことではなく、社内講師でもできる比較的簡単な手法です。
まず1つ目は、事前に5Sができてない箇所、汚い箇所の写真を撮っておき、みんなの前で大写しにしていきます。
写真は特定の場所を切り取って強調されて見えますので、汚い箇所は非常に汚く感じられます。自分の担当しているところが汚く写しだされると、普通の方なら 少なからず恥ずかしい思いをしていただけるはずです。
最初の数枚はヤジも飛びますが、多くの枚数を見せられると次第にみんな口数が少なくなってきます。
このあと、5Sが完全な状態でできている写真も例示してやると、より効果があるようです。
次に、グループに分かれ、何が問題なのか、なぜ5Sができていないのかなどのテーマで話し合っていただきます。討議テーマは何でもいいのですが、現在の状 況が問題だという趣旨の発言がより多くでてくれば一定の効果があります。
最後に今後どうやって改善していくのか、課題と計画を作っていただきます。研修の中で作成した計画はそのままでは使えないこともありますが、ここでは自主 的に計画を立案してそれを表明するというプロセスが重要です。
専門の講師が担当するときにはいろいろ細かな仕掛けも入れていきますが、とにかく自分たちの現状についての共通認識を持つことと、自分で計画をつくること さえできれば研修としては十分だと思います。

研修が終われば、必要に応じて計画を再構成し、あとは実行するだけです。
しかし現実には、研修をやったところで何も行動を変えない人がたくさんでてきます。
ここで重要なのは、動こうとしない人達の方はぐっと我慢して、やろうとし始めた人達を支援しながら1ヶ所でもいいので動きを作っていくことです。1ヶ所で もきれいなところができてくると、汚いところが目立ちはじめます。きれいになったところの人達は達成感もありますので、次第に自分たちだけでやっていける ようになり、それにつれあるべき基準も上がってきます。
そうなると、5Sが進んでいない汚い箇所をみると、これまで問題と感じなかったはずのところを問題だと感じるようになります。相互に批判をしあうように なってきますし、汚い箇所もさることながらそれを放置している責任者こそ問題だ、という意識が根づいてきます。

以上、ご紹介した方法は時間と根気を必要とするプロセスとなりますが、短期間で強制的にやらせてまた後戻りするということを繰り返すより、組織 の中に5Sの意識を根づかせ組織の管理レベルを向上させるという点では効果が高いのではないかと考えています。


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