ナビゲートのロゴ

OJTコーナー

045-561-2251
お問い合わせボタン
  1. 人に手柄を立ててもらう快感

« Back | OJT体験談 INDEX |  Next »

営業のOJT

人に手柄を立ててもらう快感

  • Lボタン
  • Mボタン
  • Sボタン

会社員(男性)  2012-09-24

Tags:

人に手柄を立ててもらう快感

私の職種は営業で、取扱製品は、製造業向けの設計支援のためのある種の装置です。価格は標準構成で3~400万円くらい、1000万円を超えるものもあります。このくらいの価格帯になると、今日説明を聞いて明日購入する、ということはあり得ず、最初に製品説明をしてから導入までうまくいって1年、場合によっては2年3年とかかることも珍しくありません。

さて、以前は営業は私一人だったのですが、ある時営業をもう1人増やすことになりました。その人を仮にタナカさんとしましょう。タナカさんは私より2年ほど年長で、業界経験も長く、前職の営業成績も良かった(という触れ込みの)人でした。また、社内の職級でいうと私より1ランク上でもあったので、最初に社内システムの説明をし、お客様の担当分けを行った後は、タナカさんのやっていることを特に気にすることもなく、自分の仕事に集中していました。

お客様に製品を提案する時には、技術グループとチームを組んで対応します。タナカさんが入社して3カ月経ち、半年経つ頃になると、技術の人たちの不平不満が耳に入るようになりました。タナカさんはいつまで経っても売上げが上がらない。いや、売上げは急には上がらないとしても、このお客様は来年あたり買ってくれるかな、と期待できる案件が一件もない。A社もB社もC社も、受注できるかと思ったけど、結局全部ロストしてしまった。どんなにいいお客様がきても、タナカさんが対応したらみんなダメになってしまう......というのです。

10社に対応して10社すべてから受注するなどということはあり得ません。たまたまうまく話が進まない案件が続いたからといって責めるのは間違いではないか、ましてうちの会社の製品を扱うのは初めてなのだし、と、当初は聞き流していましたが、そんな矢先、技術部長から相談を持ちかけられてしまいました。「今タナカさんが対応しているXX社は、うちとしてはなんとしても受注したい案件である。これまでのやりとりからすると、導入の可能性は高いと判断できるが、タナカさんが対応している限り、他の案件同様、流れてしまうだろう。だからこれは君に担当してほしい」というのです。

営業は水物ですから私が今から対応したからといって受注できる保証はなく、もし落としでもしたら何を言われるかわかりません。そんな面倒なことに巻き込まれるのも嫌でしたが、そもそも私はタナカさんの上司でもなんでもなく、むしろタナカさんのほうが上級者であって、担当変更の権限など私にはないのです。そういって断わったのですが、技術部長は、営業内のことなのだから君がなんとかしろの一点張りです。

押し付けられた私は大変困ってしまったのですが、仕方がないのでタナカさんに率直に話をすることにしました。もしタナカさんが手出しは無用だというなら、それで終わりにしようと。ところが、タナカさんも弱っていたようなのです。「営業には自信があったけど、どうもこの製品は勝手が違う。今回のXX社も、絶対受注したいと思うけど、正直なところ、自信はない」。そして、「僕のやり方は、おかしいのかな? もし気づいたことがあったら、ぜひ教えてもらえないか」というのでした。

タナカさんのために時間を遣い、その結果として彼が受注できても、自分には何もメリットはないなあ、との思いはありましたが、タナカさんが正直に話をしてくれたため、協力する気になりました。それで、現状を詳しく教えてもらうと、なるほど、確かにいいところまでは商談が進んでいるようです。

「話がうまく進んだとして、導入はいつになります? 来期ですか?」
「??? ......そんなことわからないよ。買う気にさせるために必死で対応しているのであって」
「XX社の決算月は?」
「決算? 3月じゃないの?」
「今予算はどのくらい持っているんですか?」
「知らない。教えてくれるわけもないし」
「訊きましたか」
「いや、訊いてないけど」
「次回はいつ会って、何の話をする予定ですか」
「特に決めていないけど、とにかく密に連絡を取って、向こうから何か質問なり要望なりがあればすぐに対応して、適当なタイミングで購入申請をあげてもらうようお願いしてみるつもり」
「買うかどうか、最終的に決めるのはどなたですか」
「部長だと思う。会ったことないけど」

なるほど、タナカさんがこれまでうまくいっていなかった理由が少しわかる気がしました。

数百万円、あるいは一千万円超の製品を購入する場合、どんな大企業でもふつうはまず予算化します。従って3月決算の企業であれば、導入は最短で来年の4月以降です。だいたい予算申請の締切りは12月中旬ですが、もっと早いこともあります。この締切りを過ぎてしまうと導入はまず無理です。決算が3月ではなく、6月だったり12月だったりする会社もあり、また予算が一年単位ではなく半期ごとのところもありますから、まずはそれを調査することがたいへん重要です。

今期何かを購入するつもりで、予算だけ既に確保している、ということもあります。この場合は、呑気にしていてそのお金を使われてしまったらどうしようもないわけですから、スピード勝負になります。

必要な時期までに、必要な説明を済ませ、必要な人に会い、最終的な判断をしてもらう、そのためには何をいつ行えばいいか。カレンダーをにらみつつ、計画的に行動を起こす必要があります。行き当たりばったりでは、期待する方向になかなか話が転がっていきません。タナカさんの話を聞いていると、受注までのタイム・ラインというものが頭に描けていないようでした。

そこで今後の進め方として、「まずXX社の決算月を調べてください」「お客様には電話で、今期予算を持っているのか、来期の申請を検討しているのか、どちらか聞いてください。普通は教えてくれます」「次回の訪問の際には部長にご同席いただけるようお願いしてみましょう。そのために......」「製品の評価の方法については......」などとこと細かに指示を出し、さらに、

1)お客様に電話する時には、必ず私の目の前でかけること
2)お客様にメールを送る時は、送る前に必ず私に文面をチェックさせてもらうこと
3)訪問する時は、私は同行しないが、出かける前に、何の話をするか打ち合わせをすること。戻ってきたら、どんな話だったかすぐに教えていただくこと

これを3カ月続けましょう、とお願いしました。そこまで子供じゃない、と怒られるかと当初は懸念しましたが、素直に聞いてくれたのはありがたかったです。彼としては、コンスタントに営業実績をあげている私に敬意を表してくれた......というより、藁をもつかむ気持ちだったのかも知れません。

数カ月後、XX社からの受注が決まりました。私がこの案件に関しタナカさんを手伝っていることは社内でもほとんどの人は知りません。タナカさんのプライドを尊重して、人前では話をしなかったからです(技術部長には、私が手伝うからと了解を得ましたけど)。タナカさんにとってはこれが初受注。周囲からは「よかったですね」「おめでとうございます」などと言われていましたが、私に声をかける人はいません。本当はここでタナカさんが、「これは君のおかげだ。今日はおごるから飲みに行こう」くらいのことを言ってくれても良かったように思いましたが、それも特にありませんでした......。でも、実は私もとてもいい気分だったのです。

この時初めて私は、自分が受注するのはもちろん嬉しいけど、他人の受注を見ているのも楽しいものなんだな、ということを知ったのでした。


OJT新人ノート

OJT実践ノート

Trackback:0


ナビゲートのOJT教材・研修

OJT実践ノート

書いて残せる「OJT実践ノート」新人を育てる確かな方法があります。

OJT新人ノート

新人の成長を記録し、OJTを活性化させる「OJT新人ノート」

OJT実践ノート紹介動画

「OJT実践ノート」の概要をビデオで解説します。

OJTリーダー養成研修

新入社員受け入れのためのOJTリーダーを育てます。

OJTリーダーフォロー研修

OJT指導の見直しに効果的です。

新入社員読本1st step

研修の副教材や内定者向け教材としてご活用ください。

最近の記事

カテゴリ

過去分一覧(年度別)

タグ一覧

このページの先頭へ