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ダメ新人への初OJT、その後の20年......

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出版(女性)  2019-01-25

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ダメ新人への初OJT、その後の20年......

Bさんは、私が24歳のときにOJTリーダーを担当した新卒新人です。
Bさんの同期は5人いましたが、今も残っているのは彼女だけ。すでに20年のキャリアになるでしょうか。
かくいう私は、その会社を8年ほどで辞めましたので、Bさんとのつき合いは辞めた後の方がずいぶん長くなってしまいました。
残念ながらOJTとしてはうまくいかなかったと思います。
しかしお互いにはじめてのOJTで思い入れも強く、いまだに親交が続いている仲です。

当時、勤めていたのはタウン誌を発行する会社でした。
制作部は、企画・営業チームと編集チームとに別れており、私は企画・営業チームに所属していました。
そこに、AさんとBさんという2人の新人が入ってきて、BさんのOJTを私が担当することになったのです。
その会社にはOJTの制度らしいものはなかったのですが、当時、パートさんたちの指導役を私が担当していた(押しつけられていた)ので、指導することに抵抗はありませんでした。しかし新卒新人、しかも企画業務を指導するのははじめてでした。

正直「Bさんはこの仕事にまったく向いていない」と思いました。
もう1人の新人Aさんのほうは発想力も行動力もあり、明らかに向いているタイプです。それに対してBさんは、「ぼーっと生きてる」のを絵に描いたような印象。
すでに同期からも「ぼーちゃん」とか「ぽけ子」とか呼ばれて、バカにされているありさまです。
比較してはいけないと思いつつ、なぜ私はAさんの担当にならなかったのだろうとか、そもそも人事はなぜBさんを企画業務に配属したのだろうなどと恨み言を吐きたくなる日々でした。

資料を作らせると、さらーっとして中身がありません。一般論を丸写しした感じで自分の意見がありません。説明をさせると、話があちこちに飛んで焦点が定まりません。時間をとってそもそもから説明しようと思っても、すぐに集中力が切れてもじもじする始末。
「これはどういう人を対象にしているのかな」
「調査をするのは何のためだっけ」
などと質問をしても、「うーん......」といって首をかしげるばかりです。
聞き方が悪かったのかと思い、
「ええっと、もう少し具体的に考えてみよう。例えばBさんがお客さんだったとしたら......」などと私なりに工夫してみるものの、今ひとつピントが合ってきません。

私の努力はことごとく打ち砕かれ、徒労感と敗北感にさいなまれる日々でした。
今思えば、指導の仕方にもっと工夫の余地があったのかもしれませんが、当時はいっぱいいっぱいでした。

しかし人懐こくて、私のことも慕ってくれていたので、かわいげのある後輩ではありました。
とは言え仕事は仕事、組織は適材適所であるべきです。
課長の判断で、Bさんは1年後に編集チームにかわり、2年後には業務部に異動になりました。私が辞めた後もいくつかの部署をてんてんと渡り歩いたようです。

Bさんが勤続10年の頃に会ったとき「チームリーダー」という肩書きの名刺をもらいまいました。
「へぇ、リーダーになったんだね」「肩書きだけですよ。部下はいなくて実質1人ですから」と言って笑っていました。

Bさんが勤続15年の頃、はじめて部下ができて喜んでいました。
しかしじきにその部下にひどく悩みだし、「信じられない、聞いてもらえますか」とカフェでえんえんと悩み相談を受けたりもしました。たとえ部下が1人でも、マネジメントとは悩ましいもののようです。
そしてその翌年にはその部下は辞め、Bさんはまた部下なしのリーダーになっていました。それから長い間、Bさんは1人だけのチームでした。

そして先日会ったとき、Bさんは課長になっていました。
勤続20年で課長というのはかなり遅咲きではありますが、それでもあのBさんが課長になるとは、なかなかに感慨深いものです。
部下も3人いるとのことでした。「へぇ、すごいね。今度はうまくいってるの?」と聞くと、「今のとこ大丈夫そうです。部下のほうができるもんで。正直、私いらないんですよ」と照れ笑いしていました。

「そうか、よかったね」と心の中で思いつつ、Bさんの20年を勝手に俯瞰してみました。
新人当時は、周囲からバカにされ、常にAさんと比較されて、じくじたる思いもあったことでしょう。
異動になったときは、やっぱり私じゃダメですね、と悔し涙を流していました。
その後部署をたらい回しになり、同期の部下として働いていた時期もありました。
ある部署では、Bさんはひそかに上司に恋心をいだいたのですが、あろうことか上司は自分の後輩と結婚してしまい、その状況下でBさんは、部下として何年か働いていました。
出世も同期からはるかに遅れ、やっと部下がついたと思ったらうまくいかずにまた1人になり、孤独な思いもしたことでしょう。その同期たちも誰もいなくなり、Bさんは今、課長となってその場所にいるのです。

なんで辞めないの?と言ってくる人もいるようです。自分をごくつぶしのように感じることもあるようです。
しかし地味な道のりだけど、彼女は彼女なりに自分の道をただただ歩んできたのだな、これはこれですごいことだなぁと、スピンアウトした私は思うのです。
いや、自分の道を歩むというよりは、たまたま置かれた環境に、ひっそりと、でもしっかりと根をおろして生きてきたという印象のほうが近いです。
腐ることなく風雨を耐え忍んで咲いている、一輪のかれんな花を見るような思いがしました。

今だにぼーっとしているし、今だにピントは外れているし、もしかしたらBさんの部下たちは迷惑をこうむっているかもしれないけれど、でも、か細い根でしっかり大地をつかむような強さを、彼女から感じました。
それは私にはない強さかもしれないと思うのです。
20年目にして、当時のダメダメな後輩に、人生の何か大切なことを教えられたような気がしたのでした。


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