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仕事の目的を考える

一所懸命やっても......

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家電メーカー(女性)  2007-02-20

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一所懸命やっても......

コンビニでおにぎりを買おうとした時のこと。ちょうど入荷用トラックが到着したのだろう。店員が2人がかりで山積みのパレットを動かしながらせっせと商品棚に並べている。 私はおにぎりを選びたいのだが、その並べている店員が邪魔で見ることができない。 店員も私に気がついてはいるのだが、見やすいようによけるとか、そういう気遣いはまったくしてくれなかった。
「いらっしゃいませー。今おにぎり割引キャンペーン中です!」とレジの方から、おにぎりをアピールする声が聞こえてくる。 「買いたいんですが......取れないんですけど」と私は言い返したかった。頑張って作業しているのはわかります。早く並び終えて、違う作業にかかりたいのかもしれない。 でも、ねぇ。棚がガラガラになっていたわけでもないし、客を無視してまで行う作業なの?なんか本来の目的を忘れていませんか? 私は、店員の邪魔をするような形で割り込み、なんとか2個つかんだ。そのおにぎりを食べながら、以前の上司、Wさんを思い出した。

3年前の話である。私は商品企画部に所属していた。ある時、Wさんから、デジタルカメラについて調べるよう指示された。 インターネットで検索してみると、一つのメーカーだけで、過去から最新のものまで20種類以上あった。その商品を一つ一つ見ていくのは結構大変な作業だった。 でも、懐かしいデザインや知らない機能などがいろいろ出てくるので楽しい。 私は、「調べる」という作業に没頭した。一時間ほどたっただろうか。集めた情報を整理し、見やすくした上で、Wさんの所へ持って行った。
私  「できました。結構な数でした」
Wさん「ふ〜ん。それで?何がわかった?」
私  「さあ......」
どんなデジタルカメラがあるのかを調べることにとらわれていたので、「その資料自体の意味」は考えていなかった。 それを使ってWさんが煮たり焼いたりするもんだ、くらいに思っていた。私は、何も言えず、ただ、もじもじした。 すると、Wさん「じゃあ、違う製品についても調べてみたら?MDとかハンディカメラとかさ」 ......私はその言葉に従い、また同じような作業を繰り返した。それができあがって持って行く時は、調べたことから「わかること」はあらかじめ考えていた。
私  「できました。初めて発売された頃から見ると、ずいぶんとサイズが小さくなりました」
Wさん「そうだね。それはなぜだと思う?」
私  「気軽に持ち運べる小型のタイプが消費者に人気だからではないでしょうか」
Wさん「そうだろうけど、それで?」
私  「えっと......その一方で、サイズは大きいが、機能も多いタイプもあります。多少持ち運びは不便でも、本格的な撮影をしたいという需要もあるからではないかと」
Wさん「そうだろうね。それで?他には?」まだ続くか!と思いながら......
私  「それと、円みの帯びたデザインが流行ってますね」
Wさん「そうだね。それは何故だろう?」
私  「それは、金属の加工技術が進歩したから。それからカメラ自体が今までの機械というイメージから、生活ツールという親しみやすい存在に変わったことに合わせて......」
Wさん「そうだね。それで?」
私  「ええっと......」また頭をひねる。
つまずくと、私はまず自分の席に戻った。そして、資料をにらみながらWさんが満足する答えを探そうと必死だった。メーカー別、時代別、機能別に比べてみたりした。 そこで気がついた商品の特徴などをいくつか見つけ出しては、Wさんのところへ行って話した。そのたびに、先のようなやりとりになった。でも何度繰り返してもその先へは進めない。 しだいに気がつくことも減り、焦ってくる。早く次の作業に進みたかった。「なぜ同じような作業を何度もさせるのか」とWさんに対しても腹が立った。 仕事はタイムリミットがある。デジタルカメラやMDの加工技術の進化に詳しくなっても、私の仕事は終わらない。私が煮詰まっているのを見るに見かねたのだろうか。Wさんは言った。 「資料を作ることが目的になってはいけない」と。その言葉は、目の前の作業から一歩引いて、「なぜこのような作業が必要なのか」と考えるきっかけになった。 そして、デジタルカメラを調べることも、その特徴をとらえることも、その作業自体が目的ではない。「新しい商品を企画する」という最終ゴールに向けた、情報や手段の一つでしかないと気付いた。 調べたことを参考して、企画中の商品はどうするべきかという考えを持っていくことが必要だったのだ。だが、当時の私は、それがわかってもまだ憤慨していた。 「要求を早く説明されていたら、アイデアを考える時間はもっとあったのに」と思ったからである。なんだか時間が惜しかった。
でも、と「今」は思う。
あの時、気をもんだのはWさんの方だろう。Wさんにとっては、早く答えを言ってしまった方が簡単だった。 自分の作業を中断して、質疑の時間を割くこともないし、さっさと作業は終わったはずだから。 でも、Wさんは、そうしなかった。なぜか?似た作業を何度もさせることで、「本来の目的に気付く」ための「考える」時間を私にくれたのかもしれない。 そして、また、同じような作業を行う時、ただ「指示された作業をする」だけの部下にしないように育てようとしたのではないかと思う。非常に辛抱強い指導だ。

部下や後輩に指導する時、「方法やルールを教える」ということが中心になりやすい。そして、教えた通りに行動してくれることが、ありがたくもある。 しかし、しばし辛抱して「考えさせる」ことも必要なのだと思う。仕事は、いくつもの作業を平行して進めていかなければならないことが多い。 そうなると、つい、目の前の作業だけにとらわれてしまう。最終的なゴールを忘れ、違うコースを走ってしまうこともある。 正しい走り方だけを習っていたら、どうやって元に戻るのかも、どこがゴールなのかも、なぜ走っているのかさえ、自分で考える力は身に付かないかもしれない。

おにぎりを一所懸命に並べていた店員。入荷されたらすぐに補充するように習ったかもしれない。 その作業中に客が買いに来たらどうするか、マニュアルには書いていなかったのかもしれない。 しかし、なぜおにぎりを並べているのか?に気がつくことができたら、せっかく頑張っている作業に対して、不満を持たれることもなかったろうに。 そして、その10分ほどの間に、美味しいおにぎりを手にできた客はもっといたかもしれない。


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