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海外のインターン事情

国際機関のOJT(2)インターンは目下の者?

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国際機関(女性)  2019-09-24

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国際機関のOJT(2)インターンは目下の者?

フランスにある国際機関で働きはじめてから3年がたちました。新卒で日本企業に就職してから10年間、日本で経験したOJTと比較して、海外でのOJTについて書いてみたいと思います。(1)はこちら。

フランスに移住したばかりの頃は、右も左もわかりませんでしたが、徐々に自分よりも後に採用されたメンバーが増え、自然と自分の知っている業務を周りに説明する場面が増えてきました。その中でも、大学・大学院を卒業して職場体験のためにやってくるインターンは、職務記述書で採用されていない以上、指導してもらわなければチームのために働くことができません。このときばかりは、OJTらしい対応が必要となります。
新卒一括採用がなく若年失業率の高いヨーロッパでは、大学の卒業年次よりも前から長期休暇を使ってインターンやボランティアの経験を積み、どうにか職務経歴を充実させて就職するのが一般的なようです。インターンには無給のものも有給のものもありますが、話を聞いていると一般の企業では有給のものが多いという印象を受けました。一方、私の勤務している国際機関のインターンが無給であることが、数年前に海外のプレスに大きく取り上げられ話題になりました。国際機関でインターンをするために都会に移り住むが、給料が出ないので、深夜のアルバイトを掛け持ちしたり、家賃が払えず公園でホームレス生活をしたりしているといった点が問題視されました。私自身は、日本の無給インターン制度に慣れていることもあり「インターンは勉強させてもらっているのだから、雇用側がお金を払う必要はない」といった感覚を持っていました。一方、タダで使える労働力として大した経験もさせてもらえずにインターンが使い捨てられていること、インターン期間中は生活費を得る手段を絶たれてしまうことに、義憤を感じている同僚も多くいました。確かに、日本のインターンと違い、短くても3か月、長いと9か月ほどに及ぶインターンの間、無収入になるのは大変です。もともと経済的な余裕のある家庭でなければ子供はインターンすらできず、就職が不利になって望むような仕事につけない、という不平等の元になっているという指摘には納得できるものがあります。

10人ほど見たインターンの中で、スペイン人のサントスのことを今でも気にしています。サントスは英語やフランス語はもちろん、日本語や中国語のスピーキングもできる一種の語学の天才でした。一方、なんとなく「使えない」と言われてしまうような要領の悪さがあり、果たして彼が無事に就職できるか心もとない感じでした。私がOJTリーダーになったわけではないのですが、日本語を使いたいサントスのほうから質問してきたり、何か仕事がないか聞かれることもありました。
しかし、日本語が中途半端にできるというのは困ったもので、英語でこちらが説明したあとに、
「ダイジョウブ、ダイジョウブ」
「モンダイナイ」
などと言われると、心が狭いかもしれませんが、なんとなくバカにされているような気がしてしまいます。また、本人には全く悪気はないのですが、事あるごとに、
「ゴクローサン!」
と手を上げてきます。「目下の者からごくろうさまは使わないんだよ」と、ビジネスレベルで日本語の使い方を直したほうがいいのだろうかと一度は思いましたが、ここは日本の職場ではないし、日本で働くことも当分はないだろうと思ってそのままにしてしまいました。そもそも、「目下の者」という概念を、自分が英語で説明できる自信がなかったせいかもしれません。
サントスとのやりとりでは、いつもなんとなく違和感を感じていたのですが、隣に座っていた彼が落っことしたボールペンを私が拾ったとき、彼がそれを平然と眺めているのを見て、「あ、自分がカチンときているな」というのを自覚しました。日本の職場だったら、指導される側(後輩)が指導する側(先輩)の手を煩わせることに、多少なりとも負い目を感じるような気がします。自分だったら、慌てて自分が拾いに行くでしょうし、拾ってもらったらお礼を言うでしょう。もちろん、ヨーロッパでもこうした慣習があるのに、サントスは礼儀を知らなかったのかもしれません。しかし、このとき私は、先輩・後輩間に見られるような配慮を無自覚のうちにサントスに要求している、自分の心のほうにびっくりしてしまいました。自分は分け隔てのないフラットな人間だと思っていただけにショックでした。ほかの文化に対面したことで受けるカルチャーショックではなく、自分の中に無自覚に存在していたカルチャーがあらわになったことによる「カウンターカルチャーショック」でした。

思えば、課長が部屋に入ってくると、私は立ち上がって応対するのですが、それはヨーロッパ出身の同僚からは奇異なことのように映っていたようです。確かに、上司を立たせたまま自分は座って指示を聞くのは、日本の感覚では横柄なように感じますが、相手に敬意を示すためにいちいち立ち上がるのは非合理かもしれません。上司のカバンを持つ、エレベーターのボタンを真っ先に押しに行く、おじぎでは相手より先に頭を上げない、といった日本ではごく当たり前の行動は、そうした習慣のない人たちには滑稽なもののように見られていたようです。確かに、上司部下は対等というより、部下は家来のように仕え、必要以上に萎縮しているようにも見えます。そして、自分が上の世代に対してそのように振る舞うのと同時に、同じ敬意を当たり前のように下の世代に求めてしまいます。
私は特に意識することもなく、サントスは「目下の者」であり「私に対して配慮をするべきだ」と考えていたことを恥ずかしく思いました。おそらく、サントスが日本語の能力をもっていたために、私の中で分けていた海外モードと日本モードが混在してしまったのもあるでしょう。「インターンは無給が当たり前」という感覚も、「年上のほうがえらい」「教える側がえらい」という感覚も、大いに疑いどころだと感じました。自分本位の上下関係を知らないうちに持ち込んでいないだろうか、教える側に立つときには常に自問したいと思っています。


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