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部下に任せる上司のOJT

オレは何をすればいいんだ?

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メーカー(男性)  2003-06-16

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オレは何をすればいいんだ?

広報部に配属されて2年目になったばかりの頃、業界のある委員会の事務局をやらされた。
これは業界発展という名目のもと、2年ごとに取組テーマを決め各社が共同で取り組むプロジェクトで、その事務局を各社が持ち回りで行うことになっていた。今年は自社にその番が回ってきたのだ。こういう行き場のない仕事は何でも広報部に回ってくるのが常だ。
先に「やらされた」と書いたのは、本当にやりたくなかったのだ。当時、やっと現場の仕事を覚えてきておもしろくなっていたころだった。それとは全く関係ないプロジェクトに参加するのは負担だった。出張も多いうえ他社の役員を招いての気を使う仕事なのだ。
「え?なんで自分が?」と思った。できることなら避けたかったが、職場のみんながそう思っていたので、一番下っぱの私に役目が回ってきてしまったのだ......。
その委員会の事務局長は事業部長が務めることになった。つまりこのプロジェクトでの私の上司にあたるわけだ。この他、委員会の予算でパートタイマーの人を1人雇えることになっていた。

第1会合まであと1カ月というころ、部長が私を呼び「いよいよキックオフだな。で、オレは何をすればいいんだ?」と聞いてきた。あの〜、それって私が考えることなんでしょうか?「何言ってんだ? それを考えるのがお前の仕事だろ。シナリオをつくってオレがやることを教えてくれ」......と。初回からこの調子である。先が思いやられた。
しかし部長にそう言われてしまっては何とか考えざるを得ない。だって他に誰も頼れないのだ。過去の議事録を取り寄せたり、とにかく無知な自分の思いつく範囲でシナリオを書いてみて、それを部長に持っていった。

やはり、私の考えは浅かったようだ。細部に渡って指導を受け内容を修正された。そのときの部長の物事の詰め方が実に思慮深く、そして指導の仕方が丁寧なことに驚かされた。いい加減な人なのかと思っていたがそうではなかった。何でもお見通しなのだ。

部長という人は、大らかなようで気が短く、豪傑なようで几帳面でもある人だった。
私が部長室で打ち合わせをしているとき、本業の部下達が頻繁に部長室を訪れてきた。その際、彼らが叱責される場面を何度も目撃した。

「部長が先日言われたとおりにやってきたつもりですが......」などと部下が言うと「オレはそんなことは一言も言ってないぞ。だいたいお前自身はそれでいいと思ってるのか?どうなんだ?」などと激しい口調で問い詰めるのである。

私はそこまで叱られることはなかったので、最初は「やはり本業の方は真剣なのかな」とか「私は若いので大目に見られているのかな」などとも思ったが、そうでもないことが、じきにわかってきた。

自分なりによくよく考えて結論をもってきた場合は、それがいくら的外れなものであっても叱られることはなかった。
「部長がこう言ったから......」なんて言ったら、たとえそう言っていようがいまいが叱られるのだ。叱られる方はわけがわからなくなって混乱してしまうようだが、はたで見てると実にシンプルな原則だった。

さて、月1回のペースで委員会があるほか、半期ごとに事務局から決算報告をしなければならない。
「そろそろ報告会の時期だな。いつどこでやるんだ?」半年もやっていると、もうこの程度の質問には驚かない。すでに段取り済みである。「時期は○月○日、場所は大阪の○○会館で案内しようと思ってます。議題はこれこれです」
「そうか、じゃ決算報告もよろしくな」と言う。え? わ、私ですか?何したらいいんでしょうか?「何言ってんだ。今期の決算状況と翌期の予算案の発表だよ」予算案?その案もひょっとして......「そう、お前が立てないで誰が立てるんだ?」ときた。
あー、こうなったらしようがない。「ちくしょー、本当は広報マンなのに......」と泣き言を連ねながらも経理のにわか勉強をし、なんとか決算書と予算案をまとめあげた。
部長はそれをパラパラっとめくり、「よく考えたのか?」と言う。「はい、私なりに」と答えると、「ならそれでいい。発表しろ」と言う。え、もう中身を見ないの?......うそでしょー。

そして報告会当日。その日は委員のほか業界のお偉いさん方も出席する。普段なら顔を見ることもできないような人たちだ。緊張しながらも決算報告と予算案を発表するに至った。
うまくいくかどうかも心配だったが、それよりも部長の立場が心配だった。この役目は本来なら部長がするべきことで、みんなそう思っているはずだ。それを入社2年目若干24歳の私などにやらせていいのだろうか、しかも部長は中身をろくに見てないし......。

案の定、おもしろく思わない人もいたようだ。
「おやおや、○○計画についてはマイナス予算ですか。この計画はやる意味がないというお考えかな?」と、泣く子も黙る○○社の名誉会長に皮肉られて、会場の失笑をかってしまった。部長は赤っ恥をかいて苦笑いをしていたが、そのことについて私は後で一言も叱られなかった。

今思えばよくもやらせたものだと思う。というか、自分が恥をかいてまでなぜやらせたのか? 私を育てようと思ったのか、それにしてはあまりにリスキーではなかろうか? その点は今も不思議だ。

いずれにしても、2年間の任務をなんとか終えて、私は無事解放された。
委員会の仕事は最後の最後まで好きになれなかったが、若い時期にこの部長と仕事ができたことは、その後の私にとっては大きな糧になったように思える。


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