No.57

業務の棚卸し(1.機能を洗い出す方法)

category:業務の整理・標準化

公開日:2022年 04月 04日

業務の棚卸しを行うための基本的な方法について、これから数回にわたり例を挙げてご紹介していきたいと思います。
今回は「機能を洗い出す方法」についてです。

機能を洗い出す対象

Tips53で、簡単に以下の4つの方法に触れました。今回はこの内の「1.機能を洗い出す方法」について解説します。

  1. 機能を洗い出す方法
  2. 時間軸に沿って洗い出す方法
  3. 仕事のサイクルに沿って洗い出す方法
  4. 担当者ごとに洗い出す方法

*なお「棚卸し」と「洗い出し」は、ここではほぼ同義で使用していますが、あえて「洗い出し」を使うときは「そもそもの単位や分類から見直す」意味を含んでいると解釈してください。


さて、一言に業務の棚卸しといっても、1つの事業部門が担うような大きな業務から、1人の担当者が担う小さな業務まで、さまざまなレベルがあります。

当社では、Tips54で解説したように、業務を大中小大中小の2階建てでとらえますが、機能を洗い出す方法は、特に上流部分の業務を整理したい場合に向いています。
例えばある部門の業務を整理したい場合、一番大きな単位の業務から洗い出す、というイメージです。

機能で洗い出す

なお、業務の概念はこのTipsで何度か解説しましたが、作業と判断がひとまとまりになったセットととらえます。
では、1つの部門をイメージして業務を洗い出してみましょう。


1)部門の基本的な目的や役割を確認する

まず、その部門の基本的な目的や役割を確認します。
例では、「○○を通して速やかにお客さまの課題解決をはかる」としてみました。
このように、「〜を、〜のように、〜する」とか「〜が、〜なように、〜する」などの文章で考えてみるとよいと思います。
そして、その目的や役割に向けて必要とされる機能を洗い出します。
当社では最初に固有業務を洗い出してから、支援業務・管理業務を洗い出す方法を推奨します。

部門の役割

2)固有業務に含まれる機能を洗い出す

「固有業務」とは、職場の基本目的に対応した中核となる業務です。
まずは、固有業務とみなされるものについて機能を洗い出します。営業であれば、原価を計算する、見積りを作成する、解決策を提案する、契約を締結するなどといった具合です。
どういう機能を果たすのかを「~する」または「〜を〜する」といった行動表現でとらえるとよいと思います。

3)支援業務、管理業務に含まれる機能を洗い出す

固有業務について洗い出したら、次に支援業務、そして管理業務について洗い出します。
支援業務とは、固有業務が効率よく進むようにするための業務です。例えば、営業部門の支援業務であれば、取引情報を集約する、原価情報を最新にする、必要書類を入手するなど、主に情報のコントロールを行う機能が中心になると思います。
管理業務とは、固有業務と支援業務を方向づけてコントロールする業務で、主に管理者が担います。
勤怠を管理する、役割を分担する、進捗を管理する……などが該当するでしょう。

機能は、このようにまず固有業務について洗い出し、それから支援業務、管理業務について洗い出すのがポイントです。
部門や仕事内容によっては、支援業務と管理業務を明確に区切ることが難しい場合もありますので、その場合はひと括りにとらえて構いません。

固有業務と支援業務

4)機能に適切な業務名をつける

機能ごとにその実態を表わすような名称を定義します。 それを業務の名称とします。
もっともすでに何らかの業務名が存在すると思いますので、その業務名が適切であればそのままで構いません。人や部署によって呼び方が揺れているような場合や、範囲が曖昧になっているような場合は、名称を確定させます。

5)機能(業務)を階層化する

そして個々の業務の親子・兄弟関係をあきらかにして階層化します。4番の業務名をつける作業と5番の階層化の作業は、何度かやり直しながら整理していきます。そのため、4番5番は実際には並行して進めることになるでしょう。



部署名・業務名のねじれに注意

本来は、必要な機能に基づいて組織が編成されますので、一番大きな業務の単位が部署名と重なることになります。
しかし、歴史のある企業に多いのですが、時間の経過とともに機能と部署名がねじれ現象を起こしている場合がときどき見受けられます。例えば法人営業部とあるのに、個人を対象としたリテール営業も行っている、店舗事業部が通販事業も行っている、関東事業部と関西事業部で対象エリアが重複している、……などといったケースです。
また、機能と業務名がねじれ現象を起こしている場合もあります。例えば、設計業務は本来は設計を行う業務であったはずなのに、いつのまにか外部委託の発注業務になっているなどという場合です。時間の経過や社内の事情とともに、仕事の内容が変わっていくのは当然のことなのですが、徐々に変わっていくことで、組織の中にいる人は違和感を感じなくなってしまうのです。
業務マニュアルを作る場合、この概念のねじれが混乱を招く場合が多々あります。また、ねじれたまま正しく書こうとすると解説がくどくなってしまいます。業務マニュアルは特に新人指導で使うことが多いので、新人がとまどわないようにしなくてはなりません。とはいえ部署名を急に変えるわけにはいきませんので、本来の機能と現組織の関係が把握できるよう、あらかじめ図解を使って解説しておくと、その後の解説がシンプルにできると思います。

author:上村典子kamimura

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