No.55

業務マニュアルを簡単に作ってはいけない

category:マニュアルの作り方/ワンポイント

公開日:2021年 04月 08日
更新日:2021年 07月 02日

オンラインで情報を手軽に共有できるサービスがたくさん出てきました。 当社もCMSでのプラットフォームを提供しています。誰でも手軽にマニュアル等を作って共有できる環境が整うことはよいことだと思います。 一方で、手軽に作れるからといってやみくもに作り続けると、後々めんどうなことになる場合がありますので、今回はその点についてお伝えします。

1.業務マニュアルの作成は簡単ではない

情報を構造化する理由

当社で業務マニュアルを受託する場合、仕事の整理と設計段階に多くを費やします。設計段階では、業務を行うために必要な情報を、その性質に応じて 基本、実践、関連情報というくくりで整理します(Tips46でもご紹介しました)。これを「情報の構造化」と呼んでいます。当社ではその構造をもとにメニュー体系やCMSを設計します。

業務マニュアルの情報構造モデル

すでに長きに渡ってこのようにしてきました。もちろん業務は変化しますので、数年に一度、再整理する必要はあります。ただし情報の性質は変わらないため、構造を変える必要は発生しません。例えるなら、骨格は変わらないが、ときどきはダイエットや筋トレは必要、というレベルの改修になります。
この方法を確立する前は、大量の資料を前にぼう然とすることがままありました。

それでも業務マニュアルを作るのがしんどい理由

情報の構造化をベースに、これまでさまざまな業種、職種のマニュアル・教材を作ってきましたが、「業務マニュアルを簡単に作れる」とは今だ思っていません。たとえ業種や職種が似ていても、業務プロセスは企業ごとに異なるため、受託のたび、毎回大変にしんどい思いをします。なぜしんどいか、その大きな理由の1つは、社内で「簡単手軽にマニュアルを作られるから」です。
検索機能を使って探せるので、構造化などせずに自由に作ってもよいのではないか、という意見もあるかもしれません。
しかし、実際に当社が依頼を受けるのは、情報がありすぎてどこからどう手をつけてよいかわからないという状態の場合が多いのです。


そこで、もし情報の構造を意識せずに業務マニュアルを作り続けた場合、どういう問題が起こるかについてご紹介しましょう。


2.手軽に作った結果起こる問題とは

冗長になる

例えばある業務の手順解説があるとします。作成の過程で、あるいは更新のたびに、関連情報がどんどん追加されて冗長になってしまうことがあります。そうなると元々の手順自体もわかりにくくなってしまいます。

業務手順が冗長になる

バリエーションが発生する

ある業務についてのマニュアル類が複数作成され、取り扱う範囲やその内容が微妙に異なりつつ重複するという状況が発生します。さらに時間が経過するとともにそれぞれに別バージョンが発生し、似て非なるバリエーションがたくさん発生してしまうという事態を招きます。

業務マニュアルのバリエーション

範囲や粒度がバラつく

類似のテーマでも、取り扱う範囲や作業の粒度がバラつきます。作成者(担当者)がその仕事をどうとらえているかによっても、粒度は変わってきます。

業務マニュアルのバリエーション

基本がもれる

各自が断片的にマニュアルを作ると、重複が多い一方で肝心な情報がもれる傾向にあります。特にベテランが作る業務マニュアルによく見られがちなのは、基本がなくて例外ばかり書かれているものです。
実際に現場で仕事をしている人はすでに基本を熟知しているため、それを書く必要を感じないのです。それよりも日常的に問題になるのは例外処理のほうですので、無理もありません。
そのため、ベテランが作るマニュアルは、新人が見たらさっぱりわからない、ということが往々にして起こるのです。

業務マニュアルの基本がもれる

3.情報を構造化することのメリット

情報を構造化するメリットは上記の裏返しですが、以下の5点にまとめられるかと思います。


作りやすくなる(冗長さ、重複をふせぐ)

作り手にとって、作りやすくなります。情報を性質別に分けることで、この情報をどこに書けばよいか、などと迷うことが少なくなります。
解説が簡潔になり、同じ内容を重複して書くことを防ぐこともできます。

*もっとも、大事なことは重ねて書いてもいいと思うのですが、意図的に重ねることが大事です。構造化することで、なし崩し的な重複をある程度避けることはできると思います。


わかりやすくなる

体系的に整理されている情報は、体系的な理解を助けます。
情報の構造は、新人にとっては理解のフレームワークになり、必要な情報がどこにあるか見当もつけやすいと思います。これにより、学習効率をあげることができると思います。


教えやすくなる

指導する側にとって、教えやすくなります。
新人や異動者が配属されたとき、理解度に合わせて段階的に指導・OJTができるようになります(そのように設計することが大事です)。


改修しやすくなる

業務マニュアルの管理者にとって、改修しやすくなります。
情報の性質に応じて、おおまかに改定頻度も想定されますので、その後の管理もしやすいと言えます。
また、マニュアルの範囲を他の業務にも拡げたい場合に、構造的になっているので増築しやすくなります。

情報を構造化することで、以上のようなメリットが得られると思いますし、業務の構造そのものが貴重なノウハウになると思います。
できれば構造化に対応できるプラットフォームを選択するとよいでしょう。そして、作り過ぎて途方にくれる前に見直しを行うことをお勧めします。
すでに途方にくれてしまった場合は......ご相談ください。

author:上村典子kamimura

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