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キャビネット内のファイルの整頓はどのようにしているのでしょうか。

キャビネットは担当者ごとに割り当てていることを前提として教えてください。キャビネット内のファイルの整頓について、ある担当者は「私は使いやすいようにファイルを並べている。他の人が見てもファイルは品目ごと会社ごとに記載しているのだからわかるでしょう。abc順などに並べ替える必要はない。私が使いづらくなる」ということでした。
会社ではそれぞれ部署ごとに扱うファイルが違うのですが、5S活動の考え方では、キャビネット内のファイルの整頓はどのようにしているのでしょうか。

5S活動自体では、基本的な考え方はありますが、詳細な整頓方法まで規定しているものはありません。整頓についても基本的な条件はありますが、実際 の管理方法は各企業や職場の実情に合わせて工夫するのがベターなようで、弊社もそういった指導スタイルをとっています。
「キャビネット内のファイル」を例にとると、不要なものがないこと、誰でもすぐに取り出し、元に戻せること、そして最少労力で維持できること、あたりが条 件です。つまり、キャビネットという空間を「ムダ無く」有効活用することと、ファイルの情報を共同利用できるようにすること、そして維持管理に必要な時間 のムダを最小限にすることですが、これは5S自体の目的に対応したものです。
これに対し、整頓方法はファイル自体に表示をすることは最低限のルールになりますが、並べ方はそれぞれ一長一短あり、ファイルの性格や利用状況によって最 適と思われる方法を選択することになります。
また、ISOの文書管理基準や情報セキュリティー規定などの他のルールがある場合は、5Sのルールより優先されますので、職場の事情や利用者の利便性にか かわらず、そちらに従うことになります。

今回のご質問の状況の場合、上述したような別のルールはないものとすると、ポイントは2つほどあるかと思います。1つはキャビネットを「担当 者ごとに割り当てている」という点です。もう1つは、そのキャビネットで全体のルール(abc順)と個人の使いやすさのどちらを優先すべきかという点で す。
前者については、そのキャビネットが個人が主に自分の使うものを保管するスペースとして割り当てられた領域なのか、共有ファイルを管理する領域だがその管 理責任者として担当者に割り振られているのかによって少し差があります。

個人スペースとして割り当てられているのであれば、その使い方はある程度個人の裁量を認めざるを得ないかもしれません。もちろん、ムダなもの がなく、きちんと表示もされ、定位置を決めておくといった5S的な管理がされていることは最低限の条件になります。ただし、個人スペースといえども会社が 貸与しているスペースであり、そこに収納されるファイルも会社の資産であることを確認し、決してプライベートな領域ではない前提は了解しておく必要があり ます。
ここでの問題は、本当に個人使用のスペースが必要なのかという点です。個人持ちの資料が多い職場では、そうしたほうが便利とされるところも少なくありませ ん。ところが、個人スペースを廃止してみると整理が進み、スペースに余裕ができる傾向があります。つまり個人スペースを認めると、どうしてもムダなものを 抱えてしまい、またそのムダにチェックが入りづらくなるという傾向があるわけです。
個人スペースを廃止しようとすると強い抵抗にぶつかるケースがありますが、これはそれだけ自由度があり、ルーズにしても許されていることの裏返しですの で、段階的でもいいので個人スペースをなくしていくことが望ましい方向だと言えます。

さて、個人スペースではなく、共有スペースであるキャビネットを担当者は管理しているだけという前提に立つと、2つめのポイントである「全体 のルール(abc順)と個人の使いやすさのどちらを優先すべきか」が論点になります。
管理方法(並べ方)自体は一長一短ありますのでここでは考慮しないことにします。そうすると、全体で統一ルールにしたほうが使いやすく管理もしやすいか、 キャビネットに収納するファイルの性格によって最適化したほうが使いやすく管理もしやすいかというあたりに議論が絞られます。
この場合、そのキャビネットのファイルを「使う人」の範囲が広い場合は統一ルールのほうがベターで、「使う人」が限られていると統一ルールである利便性は 薄れてきます。また、キャビネットごとにまったく異なる性格のファイルを収納している場合は個別に基準を作ったほうが使いやすくなる場合もありますが、同 じ顧客別のファイルを担当者ごとにキャビネットを分けて管理しているようなところは、統一ルールのほうが望ましいと言えそうです。

実際には個別の管理方式でなければならない理由というのはあまり多くはありません。こじつけのような理由や変更可能な理由が混じっていること がよくありますので、それらを1つひとつ取り除き、本当に理にかなった理由があるのかを見極める必要があります。
逆に、統一ルールのほうも合理性を欠いていたり個別の状況に対する検討が不十分なまま決められてしまう場合もあります。
また、説明不足や決定プロセスへの参画が不十分なために理解が得られないということも少なくありません。そのため、統一ルールのほうも硬直化させず、個別 の意見を汲み取って改善していく姿勢は必要かと思います。

少し漠然とした回答になってしまいましたが、5Sの場合、こうでなければならないという絶対的なものは少ないため、個々の状況をよく観察し、 議論し、変えられるところは変えながら、みんなが守りやすく、便利になるルールを作っていくことが重要となります。5Sが完成することによる効果と同じく らいに、合意形成と改善のプロセスにも大きな価値があるためです。
もちろん、妥協して楽な方向に流れては意味がありませんので、あくまで管理レベルを上げていくことを目指しながら議論や改善を進めることが基本といえま す。

今回のご質問について言えば、統一ルールに揃えていく方向の議論を基本とすべきだろうと思います。統一ルールにも長短ありますが、組織変更や 異動、レイアウト変更が発生した際に、ムダが少なく、早く新しい体制でスタートできるなど、全体最適となる側面が多いためです。しかし、形式的な統一ルー ルで個々の効率を低下させると効果がマイナスとなってしまいます。
そこで、基本の方向を確認したうえで、それができない理由をどこまでつぶせるか、例外箇所をどれだけ狭くできるかをじっくり議論し、合理的でみんなが納得 できる落とし所を探っていくことが最善かと思えます。
回りくどいことは確かですが、そうしたほうが決まったルールが守られやすいし、みんなの理解も深まり、次のステップへの活動の近道となるためです。

以上、ご質問内容に対し、周辺的なことばかりの回答となってしまいましたが、多少なりとも参考にしていただけると幸いです。


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