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キャビネットの扉は撤去するのがあるべき姿なのでしょうか?

事務所のキャビネットの引き戸をすべて撤去するように言われました。「見える化」「扉の開け閉め時間の削減」が目的です。
しかし、扉を撤去すると特に一番下の段はホコリが入り込みますし、開けたら閉める、使ったら元に戻すという子供が教わる基本の躾を守り、収容物が明確になっていればあえて撤去の必要は無いと思います。
製造の現場ではなく、営業の事務所に於いて5Sを推進するにあたり、すべての扉撤去はあるべき姿なのでしょうか?

質問者:製造業 営業部門担当者   更新:2010.12.21 (作成:2010.12.21)

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2つのレベルの考え方を解説したのち、現実のオフィスではどう対応するかという順で回答します。
考え方の1つは、キャビネットの引き戸式の扉について、5Sではどう考えられているかという点です。そしてもう1つは5S以外のルールや価値が存在している場合、どう5Sの考え方との間でどう折り合いをつけるかという点です。

●5Sにおけるキャビネットの扉の考え方

まず、5Sではどう考えているかについて解説します。キャビネットの引き戸式の扉に関しては、5Sの中の2つの考え方が主に関係します。
第1は、職場の中から一切の不要なもの、すなわちムダを徹底的に取り除くという考え方です。キャビネットの中がきれいに整頓され、管理できているのであれば、扉があっても無くても同じなので、あっても構わないじゃないかという考え方はできます。しかしながら、引き戸式の扉がある場合には、物を出し入れするたびに引き戸を開けて、閉めるという動作が必要となります。引き戸が最初から無ければその動作は必要ないわけですから、5Sの観点からすると引き戸を開け閉めするのは不要な動作、すなわちムダとなります。よって5Sではその引き戸式の扉そのものが不要なものという捉え方がされます。

第2は、職場の中の不具合が目立つようにするという考え方です。扉があっても無くても中がきれいに管理されていれば同じですが、仮にファイルが1冊持ち出されたままになっていたり、不要なものが置かれたりした場合、扉が無いとひと目でわかりますが、扉が閉まっていると気づくのに時間がかかるかもしれません。もう少しいうと、オフィスに行き場所のない物があった場合に、扉付のキャビネットがあるとその中に一時的に隠すことができますが、扉が無いと「ちょい置き」がしづらく、正式な置き場所を確保して納める必要が出てきます。
ホコリについても同じで、扉があるほうがホコリが溜まりづらいのは確かだと思いますが、最下段は多かれ少なかれほこりが溜まります。うっすらホコリが溜まった場合、扉があるとしばらく放置することも可能ですが、扉が無いと目立ちますのですぐにふき掃除が必要となります。
こうして持ち出しや「ちょい置き」、あるいはホコリが目立つようにし、できるだけ早く是正し、正常な状態に戻るようにしようというのが5S流の考え方となっています。

こうして考えると、面倒で手間になる方法をわざわざ求めていることになりますが、ここに5Sの考え方の特徴があります。たとえば、キャビネットに扉が無いと、むき出しになったファイルの表示がゴチャゴチャと目に飛び込み、非常に目障りで落ち着かないオフィスとなります。そうなれば今度は表示のルールを工夫し、統一感があってきれいに並んで見えるように表示をやり直すことを求めます。
あるいは、扉が無いと、すぐにホコリが溜まって何度もふき掃除をしないといけない状態になります。そうであれば、今度はホコリを舞い上げている床をきれいに掃除しようとか、室内にホコリを持ち込む原因を防止しようという方向での工夫を求めます。
こうしてあえて面倒なほうを選択し、徐々にレベルアップを促していこうというのが、5Sがねらっているところとなっています。

●他のルールと競合する場合の折り合いのつけ方

しかしながら、職場の中には5S以外にもいろいろなルールがあります。たとえば、危険物や薬品などの取り扱いルールや情報セキュリティに関するルールなどです。販売・サービスの店舗の場合や、社員のストレスマネジメントを重視している会社の場合には、色調や美観などに関するガイドラインなどもあるかもしれません。
たとえば、情報セキュリティのルールでは、機密書類を収納するキャビネットは扉を撤去するどころか施錠管理が義務づけられている場合もあります。また店舗では、デザインコンセプトを崩すような目立った掲示物や表示は禁止されており、収納場所の表示は透明のラベルを使って目立たないように貼るなどの工夫が求められます。
上述したホコリへの対策の手順にしても、衛生面が重視されるところでは決して扉の撤去はしませんし、通りからドア1枚のオフィスでホコリを巻き込みやすいオフィスや顧客への迅速な対応に注力すべき部署では、手間がかかり過ぎる方法を選択するのはあまり得策とも言えません。

つまり5Sのルールは、他のルールと比較すると、優先度は必ずしも高いとはいえません。そのため、5S活動をはじめたら理念重視で硬直的に取り組まないといけないものではなく、それぞれの状況、条件下で最適の管理方法を工夫し、事業や業務が全体最適となるように取り組んでいくべきものだといえます。

●現実のオフィスでの対応策

さて、ここまでは考え方を中心に記述しましたが、現実のオフィスではどう対応すべきかという点もふれておきます。なお以降では、わかりやすくするために製造部門、営業部門という対比で記述しますが、基本的には製造だから、営業だからという発想は持ち込まず、個々の職場の性格によって判断することを原則としてください。

製造と営業を一般的な職場を比較すると、製造部門のほうが仕事が時間で管理できており、部外者の立ち入りの少なく、書類も定期定量で発生するものの割合が多く、管理しやすい傾向があります。これに対し営業部門は、仕事の時間管理は取引先との関係で常に狂いやすく、部外者の立ち入りがあるところも多く、非定型的な書類が不規則に発生するため、管理が煩雑になりがちです。
また、製造部門は小さなムダな時間を詰めていくことでコスト削減効果が出やすいのに対し、営業部門はそもそもムダだらけで、扉の開閉のムダを取り除いたくらいでは営業的な効果に表れることはありません。
これらの理由から、扉を撤去したままきれいな状態を保つのは、営業部門のほうが労力を要するはずですし、そうした管理方式に対して営業部門のほうがモチベーションが働きづらいはずだと思います。また、5S以外のルールで5Sよりも優先度が高いものも、営業部門のほうが多いかもしれません。

こうして対比すると、キャビネットの扉を撤去するのは、営業部門のほうが困難度が高く、無理に撤去してもそれほど効果も得られない可能性があります。そこで、職場として抵抗感があるうちはあまり無理をせず、他の箇所でレベルアップが可能なところから優先して取り組むことが現実的かと思います。

ただし、留意しておくべき点が2つあります。
まず、オープンキャビと扉付のキャビとでは、整理整頓が維持される確率はオープンキャビのほうが明らかに高い傾向があります。扉付のキャビでは「ちょい置き」「仮置き」「表示モレ」などが発生しやすいため、きれいな管理状態を保つのはオープンキャビ以上に手間がかかります。つまり、扉を撤去してきれいな状態にするのは面倒ですが、扉を残しておくと長期間面倒な状態が続くことになります。
よってもし、扉付のままきれいな状態が維持できていれば開閉のムダが残ってたとしてもそのままでよしとしてもいいでしょうが、仮に扉付だと「ちょい置き」などが無くならず管理が徹底できなかったり、開閉が面倒だという意見が出はじめれば、改めて検討対象とすることにしておくべきかと思われます。

第2は、営業プロセスの改革という観点です。日本の営業部門は過去数順年間にわたって生産性がほとんど向上されていない部門だという指摘があります。努力をしてないわけではありませんが、需要は伸びずに価格は低下し、顧客要求が年々高度になることでムダな動きばかりが増えてしまったためです。少々努力して改善しても、競合も努力していますので、数字になって表れてきません。
そのため、顧客への対応力やスピードを高めることで競争力を高めようとするなら、あらゆる活動を見直し、営業プロセスを抜本的に改革していくことが必要となってきます。そうしたとき、必ず5Sのような基礎的な部分が問題となり、キャビネットの扉も含めて聖域なく点検することが必要となってきます。

キャビネットの扉の問題は、5Sを徹底するといった目的の範囲ではやってもあまり効果はでないと思いますが、営業部門はより高次の改革が常に求められているはずですので、そういった営業としての目標を意識しながら扉の撤去が必要かどうか、つまり5Sにどこまでを徹底して取り組むかを判断していくべきかと感じます


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