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2005年3月28日
企業って何だ? 〜ニッポン放送問題〜
category : [仕事・職場]
writer :[K]
ライブドアによるニッポン放送の買収問題が連日マスコミをにぎわせています。
今回の騒動には、私自身、経営者として、また企業の経営をお手伝いする立場として考えさせられることが非常に多くありました。しかし、ネットなら参加できるのにテレビの議論には参加できないもどかしさがあります。
そこで、ここまでマスコミで取り上げられてきたキーワードについて、少し整理してみようかと考えました。
■支配する
- 傘下に収めた会社を管理運営するの意。
- それをきっちりやるのは、投資した会社の経営者の責務だと思います。
■すでに詰んでいる、穴熊
- 買収先の経営者や従業員の感情を逆なでする、あまり上品な表現ではありません。
- 今にして思えば、詰んでると思えたのなら、なおさら言葉を選んで丁重に提携を働きかけたほうがコストが少なくて済んだように思います。
■マスコミ(電波)は公共財
- 私自身、AM放送って前回いつ聞いたか、記憶にありません。
- ラジオ放送自体は……。たまにアメリカのFM音楽番組を聴きます。インターネット経由で。
- 限られた公共の電波をごくごくマイナーな層だけのためにしか使われてないのは、正しかったのでしょうか。
- 視聴率を競って収益性を高めたり、テレビショッピングで特定企業の利益に貢献するのは公共財の使い方として構わないのでしょうか?
- 一般の企業は公共性はないでしょうか?
- ラジオとインターネットはどちらが公共性があるのでしょう?
■土足で入ってきてほしくない
- ここでは放送局は私物になるのか、というのが最初の印象でした。
- 土足というのは買収の意味なのか、平穏だった会社に成果主義やコストカットを持ち込んでくれるなという意味なのか、よくわかりません。
- ただ、室内に入るときに靴を脱ぐのは日本の習慣で、今後出現する欧米の資本に向かって言っても通用しないだろうなと思います。
■企業価値
- 企業価値の中心は株主価値だと理解していましたので、筆頭株主にとっての価値と相反する別の価値があるのかと考えてしまいました。
- もちろんその価値の源泉となっているのは、従業員の能力をはじめ、収益力、商品力、ブランド力、顧客数、顧客満足度、技術力、資産、CSRの状況等々だとは思います。
■企業価値を棄損する
- これは東京高裁の見解に一票です。
- 棄損する理由にグループ内での取引停止が挙げられたのはびっくりでした。
- え? 誰が棄損させるのって感じでした。
■企業は誰のもの
- このことに関して、今日の日本の多くの企業の見解と努力の方向は一致しているように思います。
- 本来の所有者にとっての価値を高めることを上位目的とし、そのためにCSに取り組み、ESを大事にしようとしているはずです。
- 結果として価値が上がれば所有者の利益に貢献できるだけでなく、資金調達力が増し、それによって競争力が向上し、従業員にも豊かさと安定がもたらされるのだと思います。
■企業は従業員のものでもある
- 従業員の働く場であり、社会参加の場であり、自己実現の場であるべきだと思います。
- また経営者は、従業員が「我々の会社」と思えるような運営をしていくべきだと思います。
- しかし、従業員は企業の業績が落ちても、私財を投げ売って補てんするわけじゃありません。
■ラジオはリスナーのもの
- 企業が顧客重視であるべきなのは当然のことだと思います。
- 例えばスーパーは、地域の消費者に支持され、愛されるよう努力すべきです。
- でも、スーパーに陳列されている商品は消費者のものではありません。
- あ、NHKは視聴者(国民)のものだと思います。
■敵対的買収
- この意味がよくわからなくなってきました。
- 売ってたのでお金を払って買ったのに、使っちゃいけないと言われても……。
- もう元の持ち主は払い戻しちゃくれないし……。
- なんで元の持ち主でもなく、単なる管理人からそんなことを言われるんでしょう。
■ビジョンを示せ
- これは株主が経営陣に向かって要求する言葉のように思います。
- もちろん、経営体制が変わればその時点から数カ月のうちには内外に示す必要はあると思います。
- 堀江氏は、現時点で1子会社のビジョンを聞かれても考えてなかっただろうと思います。
- しかし、彼は、グループ経営者としてライブドアグループのビジョンはしっかり語っていると思います。
- あれ? ニッポン放送のビジョンは?
- フジテレビのビジョンは面白さを追求することでしたっけ?
■ラジオに愛情が感じられない
- たぶん、堀江氏にはないと思います。
- あったら大変です。ライブドアグループの経営判断を間違えてしまいかねません。
- そういう人がマスコミの経営をやっていいのかという議論はあるでしょうが、ニッポン放送自体の経営の執行を自分ですべてやることもないと思います。
■ニュース(一次的な情報)は買ってくればいい
- これも怒りを買う言葉だと思います。
- ですが多チャンネル時代を考えると、各局いろんな戦略があっていいと思います。
- ニュース専門チャンネルがあっていいし、ニュースにコストをかけないチャンネルがあってもいい。
- マスコミ関係者がこれだけ怒ることを考えると、この戦略は当たりそうな気がします。
- ところで、テレビ局はニュースの何%くらいを自前で取材してるんでしょう?
- 地方局は? ラジオは? 今でも買ってる比率のほうが高いのでは?
- だとしたら堀江氏の戦略は先進的でも何でもないのかもしれません。
■あと10年でテレビやラジオは無くなる
- とは堀江氏は言ってませんが、今のままだと先細りだというニュアンスのことは言ってました。
- 余談ですが、先日の福岡の地震のとき、私が知りたい地区の情報はテレビでは得られず、ネットの掲示板で質問したら一発でした。
- ラジオは思いつきもしませんでした。
- テレビは無くならないにしても、従来の役割が他のものに取って代わられる可能性は、すべての企業と同程度にあると思います。
- それでも無くなることはないと思いますし、テレビショッピングはやっているはずだと思います。
■ニッポン放送の社員は頑張っているのに
- ライブドアの社員は頑張っていないのでしょうか。
- これまで吸収合併されたり、買収された企業の社員はどうだったのでしょう?
- ニッポン放送の社員が頑張っていることを知っている人は、これからも頑張るように応援してあげてほしいものです。
■乗っ取られるのだったら……
- 降板するパーソナリティは、ラジオを愛していなかったのでしょうね。
- 退職する従業員は、会社が自分のものではないのでしょうね。
- 会社にとっては痛手であることは間違いないと思いますが、代わりにやりたい人はたくさんいるだろうなと思います。
- 何人抜けて、何人育つか。その期間とコストがどれくらいかが経営にとっての勝負でしょうが、ニッポン放送は財務体質がいいのであまり痛くはないかもしれません。
■ずるいやり方
- 企業としてのスピードの違いのことでしょうか。
- 相手がずるく感じてしまうときは、まず自分を反省すべきだと感じました。
- 同じ立場に立たされたら私も言いたくなるでしょうが、そういう発言は立法府に向かって言うところまでかなと思います。
- そうでないと、従業員がかわいそうな気がします。
■金さえあれば何をやってもいいのか
- 経営者なら、お金があるのならそれを最大限に活かした経営をやるべきだと思います。
- お金があるのにそれを活かせない経営のほうがむしろ問題です。
- もちろん、違法性のあるものを買ったり、違法な買い方をしたりは論外ですが、活力ある経済活動を阻害する方向に議論が流れてほしくないと思います。
- 堀江氏は「お金だけが無色透明。お金で買えないものがあったらそれこそ差別だ」と言っていたように記憶しています。これは一理あると感じます。
さて、最初はバランスよく書くつもりでしたが、書いてみるとかなり偏った内容になってしまいました。
私は、堀江氏には若くして成功していることに少し嫉妬を覚えますし、応援したいという気があるわけではありません。しかし、このところの報道でテレビのコメンテータの話を聞いていると、それらの意見により賛同できないという気持ちが強かったように感じます。
ただ、この一連の騒動に対しては、どちらを支持するかとかでなく、自分達の会社の問題としてとらえる必要があるように感じます。今後の企業間競争のあり方が変わったことを明確に示してくれた事例だと思いますし、経営者としてどうあるべきか、従業員との関係をどうしていくべきかを考え直すきっかけにしていくべきだと感じています。
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