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category : [イベント]
writer :[よ]
「ばら色のマタニティライフ」とはかけ離れた、ビクビクの安静生活で終わってしまった初めての妊娠、なんとか無事出産した後の開放感はとても大きいものでした。
車椅子ではなく自分の足で歩いてもいい、落としたものをしゃがんで拾っていい、シャワーもOK(なんと2カ月半ぶり!)などなど、これまで禁止されていたことが許されると、心もうきうきしてきます。
産んだ日から子供の世話は始まるのに、肝心の子供はすぐ保育器に入ってしまったため、これからの世話について考えるよりも安静からの開放感が勝っていました。
出産した夜ぐっすり寝ていると、夜中に看護師さんが起こしにきました。
「[よ]さん、時間ですよ」
え??何の時間だろう......。出産疲れでぐったりしてぼけていたのもあり、看護師さんの言っている意味がわかりません。
しかし彼女は当然のように私のパジャマを脱がせ、なんとおっぱいをマッサージし始めます。
そうだ、母乳を与えなくてはならないんだ。
まだ出ないおっぱいに刺激を与えて乳腺を開通させ、今は子供が直接吸えなくても「出るおっぱい」にしなくてはならないのですが、そのためには昼夜問わず3時間ごとにおっぱいをマッサージし、搾り出さなくてはなりません。もちろんまだ何もわからない新米ママなので、入院中は看護師さんが指導してくれます。
看護師さんが搾り出してくれた「初乳」は0.05ml。それでも初乳は子供に抵抗力をつけるために大変な効果があるそうです。
「最初はこんなもんです、量はそのうち増えてきます」
と満足そうに看護師さんは出ていきました。
嵐が去りまたうつらうつら眠りかけたころ、看護師さんがやってきます。
「[よ]さん、時間ですよ」
え??またですか?
3時間ごととはいえ、搾っていたら1時間くらいはあっという間にすぎます。そしてようやく眠りかけたころにまた次の搾乳時間がやってくるわけです。う、ハードスケジュール!
こうして、子供が退院するまでの長い搾乳生活は始まったのでした。
出産翌日から搾乳機をレンタルし、機械で搾乳することになりました。
手でおっぱいを搾り出すのは結構大変な作業。手も疲れるし時間もかかります。子供が退院するまでには早くても2〜3カ月はかかるため、少しでも楽に搾乳できるようにと病院が配慮してくれました。
私が出産した病院は、未熟児や生まれつき疾患をもって生まれる子供が少なくないため、ほかのお母さん方も私と同じように搾乳しておっぱいを与えなくてはなりません。
今回の4人部屋でも3人が同じ日に出産し搾乳しなくてはならないメンバーだったので、搾乳専用の部屋で、みんな仲良く指導を受けることとなりました。
搾乳のスケジュールは、1:00、4:00、7:00、10:00、13:00、16:00、19:00、22:00の8回です。
病院では21:30消灯、眠りについてから朝まで3回起きなくてはなりません。
眠りかけたころ、看護師さんがやってきます。
「[よ]さん、時間ですよ」
天使の微笑みでやさしく声をかけてくれるのですが、その奥では「起きなければ容赦しませんよ!」という雰囲気がにじみ出ています。
少し遅れて寝ぼけ眼で搾乳部屋に入ると、同じように寝ぼけた表情のメンバーがすでに搾乳を始めているので、自分だけ寝過ごすわけにはいきません。
夜中の1時や4時などは、あまりにも眠くてモクモクと搾乳するときもあれば、逆に気分がハイになってしまい、しょうもない話で大いに盛り上がってしまうこともあります。
いずれにしても花の乙女と自負している?女性が3人並んでおっぱいを出して座り、搾乳する姿は異様な光景です。
本来なら人に見られたら恥ずかしい姿なのに、女性から母親になってしまう瞬間でしょうか?恥じらいなどすっかりなくなり、人と比べて自分のおっぱいはちゃんと出ているのか、また今後はもっと出るようになるんだろうか?などとおっぱいを出したまま相談しあったりします。
また搾乳機をおっぱいにつけている姿は、まるで牛がおっぱいに機械をつけて搾乳される姿とそっくり!気分はホルスタインです!
1週間でしたが、みんなと寝食、そして搾乳まで一緒に過ごした日々はまさに「おっぱい合宿」でした。
この光景を主人に話すと彼は私を「モーモーちゃん」と呼ぶようになりました。
搾乳を始めてから私の食欲は異常に増えてしまい、これまでの3倍は食べるといって過言ではありません。某牛丼屋で、並を注文した主人を横目に大盛りをぺろり、ラーメン屋ではチャーハンとラーメンのセットをあっさり平らげ!この食欲に自分が一番驚いています。
おっぱいを出すためにはとにかくよく食べ、よく寝てストレスをためないこと!と指導されたので、ことに食べることに関しては「おっぱいのためだからね」と自分にも周りにも言い訳して、堂々と食べています。おかげで当初1回に0.05mlしか出なかったおっぱいも、いまや1日総計1リットルは出てくる勢いとなりました。
食べて、寝て、おっぱい搾って(ここまでは牛のようですね)、子供の面会のため病院へ通う......。これだけに集中している毎日。
未熟児ですが今後は無事健康に育つように祈りを込めて、そんな日々を過ごしています。
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生後2カ月を過ぎ、おっぱいを飲んでこんなに大きくなりました! |