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定年延長や成果主義は若手の育成を妨げるのか?

J-CASTニュースに「日本マクドナルドが定年制を復活 『成果主義』思惑はずれ若手育たず」(2011/9/25)という記事が載りました。
記事によると、日本マクドナルド社は2006年に定年制を廃止しました。そして2012年1月から60歳定年制を復活させ、65歳までの再雇用制度に切り替えるとしています。


記事では、小見出しで「定年制の廃止『時期尚早だった』」と掲げ、「しかし同社によると、経験豊かなベテラン社員が自身の成果をあげることを優先してしまい、若手社員の育成が疎かになってしまったという」と記述しています。
そして「 ところが、『ベテランが職務に取り組むうえで、仕事の成果と人材育成のバランスのとり方が難しく、仕事の優先順位が崩れてしまった。(定年制を復活することで)人を育てていく企業文化を再度築き上げる』と話している」とまとめています。


この記事を最初に読んだとき、正直なところ何を言っているのかが理解できませんでした。私が知っている企業の人事の状況とは一致しませんし、記事で紹介されている発言も、人事担当者がこんな脇の甘い発言をするとはとても思えないためです。
記事では、取材の裏付けとして、同社の説明や発言をいくつかカギ括弧つきで紹介していますが、それらが広報の説明なのか、人事担当者の説明なのか、それとも役員か社員の誰かの発言なのかわかりません。同社のホームページのニュースリリースには定年制復活についての発表は掲載されていませんので、おそらく、人事以外の人を取材して書いたか、記者が自分なりのシナリオに当てはめて解釈を加えたかのいずれかではないかと思います。


この記事は、同社が60歳定年制を復活させる理由を、若手の育成が疎かになったからだと言っているようです。しかし、若手の育成が疎かになったのは成果主義のせいだといっているようで、因果関係に飛躍があります。
おそらく、成果主義の批判に話を結びつけたかったのだと思います。成果主義を導入すると人材育成をやらなくなるというのも、成果主義批判の定番ですが、あまり実態を捉えた批判ではありません。
成果主義を導入している企業は、部下との面談を義務づけたり、成果の定義に短期と中長期のバランスを明示したり、プロセス系の評価をセットしたりといろいろな工夫をしています。そのため、成果主義の導入後のほうが人材育成を重視するようになった企業が多いはずですし、結局は評価制度の設計と運用次第だということを日本マクドナルド社クラスの人事担当者なら十分認識しているはずです。


では、定年制を廃止した結果、若手が育たなくなるということはあるのでしょうか。これには、若手の指導育成という側面と若手の活躍の機会という側面の2つから考える必要があります。
定年制廃止以前に若手の指導育成を行っていたのは30~50歳代の社員だったと仮定します。定年制を廃止すると60歳代の社員が生まれるわけですが、60歳代の社員が若手の指導育成をしなかったとしてもマイナスはありません。また、60歳代の社員が生まれることで30~50歳代の社員が若手の指導育成をしなくなる理由はありません。
逆に60歳定年制を復活させたとしても、30~50歳代の社員が若手の指導育成をやりはじめる理由もありません。仮に、定年制廃止で残った60歳代の社員やその下の世代のベテラン社員が、会社の期待に反して若手の指導育成が不十分だったとしたら、指導育成を義務づければすむ話で、定年制を復活させるほどの理由にはなりません。また、若手の指導育成を充実させたいなら、育てるためのしくみや意識づけが重要であって、定年制かどうかはあまり関係ありません。


ところが、もう1つの側面の若手の活躍の機会ということになると、違った状況が想定できます。定年制が廃止となり、高年齢層での退職者が出なくなると、ポストが自動的に空くことはなくなります。60歳を過ぎても急に能力が低下するわけではありませんので降格も難しく、実力本位で任用しようとしても、若手が昇格し、ポストにつくチャンスは減ってしまいます。
結果として、若手が経験を積む機会が減少し、育たないという現象が起きたことは十分想像できます。この側面も、人事制度の運用次第で解消できない問題ではありませんが、もしこの推測があたっているとしたら、成長が鈍化してチャンスが減った組織でのOJTの難しさを示唆しているようにも思えます。


記事の中では、定年制を廃止した当時の原田会長の「定年制の廃止は20~30歳代の社員のため、実力本位の意識を高めるのが狙い」という発言を引用しています。
この原田会長の発言は非常に的確だと思います。成果主義を導入していた場合、退職時だけ年齢で切る定年制は一貫性を欠きます。まして、かつて多くの企業で採用されていた役職定年や55歳や57歳での賃金カットは不満の対象でした。そこで定年制を廃止することで論理矛盾を解消し、実力本位を徹底しようとしたのだと思います。


ところが、ここで2つの誤算があったのではないかと思われます。1つは、定年制を廃止したのが2006年という点に関係しています。同社の労務構成はわかりませんが、団塊の世代を多く抱えていたとしたら、2007年以降に大量の60代社員を生み出してしまった可能性があります。
人事では、そうしたこともある程度は織り込み済みだったはずですが、その後もう1つの誤算が生じました。リーマンショックです。これにより、再就職が難しい60歳代の社員が、予想よりたくさん残ってしまうという誤算に繋がった可能性があります。
同社の決算データを見ると、2008年に4059億と売上高のピークを迎え、2010年には3232億と20%以上売上を落としています。2010年は販管費も圧縮して営業利益は回復させていますが、団塊の世代が大量に留まったとすると、若手の採用が大きく抑制され、中堅クラスの昇格も難しくるなどで、労務構成が相当に歪んでしまった可能性があります。
他社では定年延長をするにしても、団塊の世代が退職し終えてからでないと踏み切れないというところが多くありました。そう考えると、2006年に定年制の廃止に踏み切ったのは「時期尚早」だったというのもうなづけますし、60歳定年制の復活は、今のところ法的に許される範囲でのリストラ策である可能性が高いのではないかと思われます。


さて、今回はOJTというテーマより少し話を広げた考察となりました。ただ、人が育っていない一部の状況を捉えて、成果主義が悪い、定年制廃止が悪いというように、何かの制度や施策に直結させて批判材料に使ってしまうのは、あまり適切とは思えません。
OJTに関してもっと実質的な議論が増えることを期待して、今回の記事を取り上げてみました。


文責:伊藤弘二朗

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