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エンジニアにとっての基本とは?

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機械エンジニア(男性)  2004-11-11

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エンジニアにとっての基本とは?

K君は機械エンジニアである。商品を開発する部署で機構や外装の設計を担当している。

そのK君が顕微鏡をのぞいて何やら作業をしている。ちょっと前に作った1次試作品の不具合を修正した2次試作品の調整をしているようである。
試作の内容は、小さいモータの出力を歯車列で減速し、最終端の雌ネジ付きの筒を回し、筒の雌ネジにはめ合わせた雄ネジを軸方向にコンマ数ミリほど動かすものだ。機構全部を12×15×8mmの範囲に押し込まなければならない。

機構自体に難しいところは何もない。問題はその小さいサイズにある。機構設計は、あるサイズを下回ると急激に難易度が高くなる。設計目標値に占める加工誤差の割合が高くなり、通常なら問題にならない出来の差が、機能に無視できない影響を与えるのである。汎用部品も微少サイズでは極端に品ぞろえが悪くなるし、加工機の限界もある。普通の設計をそのままスケールダウンできない理由はそこにある。

実際の設計現場では、こういったイレギュラーなシーンが多く、どうやって問題を解決するかが重要である。こんなことは学校では教えてくれないし、日常生活で訓練されることなどさらにない。だから、会社では意識して経験させたり訓練したりする必要がある。

しばらくして立ち寄ると、K君は先ほどと同じ格好のまま顕微鏡をのぞいている。やれやれ。見てるこっちまで肩が凝ってくるではないか。

「調子はどうだ」
「えーと、うまく回りません。筒の勘合は軽いのですが、歯車にかみ合わせると動きが悪いです」
「そうか。ちょっと見せてくれ」

モータでの動作を顕微鏡でのぞいてみる。出力最終端の筒は、勢いよく回り出したかと思うと途中で止まりそうになり、何とか復活して回り始めたものの、幾度か正逆転運転した後、ついに回転が反転するところで完全に止まってしまった。

接眼レンズから目を離して、品物を眺める。顕微鏡をのぞく前からうすうすわかっていたことだが、筒 が浮いて傾き、穴に引っかかっているのだ。ピンセットでつつくと回るが、すぐに止まる。つつく、回る、止まる。つつく、回る、止まる。

「......筒のスラスト押さえはどうしたんだよ」

「ええと、この状態で回るようにしてから取り付けようと思いまして」

スラスト押さえとは、回転する軸が軸と平行な方向に無駄に動かないようにするための部品のことである 。
本来、機能部品としてベアリングなどで構成するのが常識なのだが、この試作の仕様では、そんなものを取り付ける空間もなければ、コストの余裕もない。

K君の1次設計は、筒の回転を外装ケースの内壁だけで支えるものだった。部品形状の制約から、歯車 は筒の端に配置された。歯車のラジアル分力を端で受けて回転を支えるには、筒の丈は少しだけ足りなかった。つまり、片持ちの筒は限度を超えて傾き、上手に回転することができなかったのである。
だから、2次試作では、筒のスラスト方向の動きを制限する部品(スラスト押さえ)を追加して、歯車の分力で雌ネジが傾かないように設計変更を指示したのだ。

そのスラスト押さえがない。

「これは、回らないよ。回っちゃいけないんだ」
「はあ......」
「なんで設計通りの形にしないんだね?」
「前の試作でも、この状態で回っていましたので、そこまで追い込んでから押さえを付けようと思いまして」
「あれは、K君の神業的な調整の結果で、きわめて微妙なバランスの上で成り立っていただけだ。その状態を再現することに価値がないとは言わないが、それは技術者の仕事じゃないなあ」
「......」
「いいか。スラスト押さえの目的は、筒の傾きを押さえて引っかからないようにすることだろう?だから、スラスト押さえがない状態で回らないのは当たり前なのだ。『やっぱり回らないか、むふふ。思った通りだな』とか笑って、おもむろにスラスト押さえを取り付けて動作確認するのが正しい技術者の姿だ。すぐに押さえを付けて動作確認しなさい」

簡単なスラスト押さえを取り付けると、筒はスムーズに動作するようになった。

技術者は、設計を現実的なイメージとしてとらえ、操る能力で評価される。そのイメージと現実の差を常に確認し、乖離を小さくするために努力するのだ。だから、技術者は、少しくらい怪しいなあと思っても、設計したモノは必ず図面通りに組み上げて結果を見なければならない。それは新人だろうがベテランだろうがエンジニアにとって、不変の原則だと私は思っている。

「な。やってみるもんだろ」
「やってみるもんですね」

あとはモータのトルクを倍にするだけだ。これが一番難しいんだけど......。


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