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マイペースな新人のOJT

大化けするかも

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シー・エフ・ツー 日高 之隆  2003-12-01

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大化けするかも

「仕事を覚える前にまず人間として成長しろ。」
私のチームに配属になった彼は、みんなからそう言われていた。
もう、入社3年目の男性総合職である。
半分冷やかしのような、半分怒気を込めた本音のような言い方で、彼のコーチ役になっている先輩社員も、いつも殴りつけんばかりに怒りとばしている。
たまたま私も他支店から赴任してきたばかりで、彼のことだけでなくメンバーの人となりや、役割などもまだよく把握していなかった。 そのため、チョット驚きの気持ちや、ひょっとしてイジメの風土でもあるのかな、という不安が走った。

最初はなぜそんなこと言われているのかわからなかったが、注意して観察すると、何となく見えてきた。
彼は、旧帝大の法科出で、毛並みは間違いなくサラブレッドである。 通常この手の若手は、将来の幹部候補としてCDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)に乗せられたり、それとなくわかるような配属をされたりするので、周りの者も何となく大事に育てようとする意識がはたらくものである。
にもかかわらず、これほどまでバカにされるのは、彼の行動様式がチョット変わっていたからである。

例えば、
・普通、狭い通路などで先輩や上司などとすれ違うときは、空きスペースなどに身を寄せて道をゆずったりするものであるが、彼は相手が誰であるのかさえも気づかぬふうで先に行ってしまう。
・また、その歩きそのものも実に早く、せかせかという感じである。
・机の上に参考資料や書類をいろいろと広げ、置けなくなると足元の床の上に直に広げるのである。誰かがつまずいたり、間違って踏みつけたりするということは気にならないふうである。

こうした、普通の人間とはちょっと違う行動様式が、「彼はマイペースで、周りの者に気が利かなさすぎる」と言われてしまう原因なのである。
悲しいかな、われわれの管理社会は、一定の枠の中にいかに上手に収まるかを競い合っているようなものだから、チョット変わった行動をとると、奇人変人のレッテルを貼られてしまうのである。

いずれにせよ、周りにも多少なりとも気遣いは必要だし、大事な仕事を床の上に広げるなどは修正しなければならない。

そこで私は、彼とすれ違うとき、わざと肩がぶつかるようにしてみた。
彼は、「あっ、すみません。」と素直に断りを言うではないか。
「別に何ともないが、ぶつかる前に気をつけたらどうだ。」
「はい。気をつけます。」
てっきり怒鳴られると思っていた彼は神妙な顔でそう答えた。
「俺がいることに気づかなかったか。」
「いえ、わかっていましたがいいかなと思って。それに仕事のことが気になっていたもので。」
「わかっていたのならよけろよ。誰でもそうだが、人間それほど偉いモノじゃないよ。気がついていてやらないのは一番いけないことだ。」
「はい。気をつけます。」
その後、少なくとも私とのすれ違いには、ちゃんと道を空けてくれるようになった。
言えばわかるのだと思いながらも、他の人にはどうなのだろうと気になる......。

彼の行動を変わったものにしている原因に、彼自身の集中力の強さがある。
それは実にすごいものがある。
多少は幼児性が残っているのかもしれないが、とにかく物事へ没頭し、のめり込んでしまうのである。 そうなると、全く周りが見えない、聞こえない状態になってしまい、チョット呼んだくらいでは聞こえないから怒鳴られることになってしまうのである。
そんなことが何度か繰り返されるうちに、怒る方も怒られる方も慣れっこになり、それが当たり前になってしまったのである。

決定的な出来事が起きた。
ある日廊下で、先輩の少し前を彼が歩いていて、女性社員が重い荷物に難儀しているところに出くわしたが、彼は気づかずに通り過ぎてしまった。 女性社員は目顔でヘルプを訴えたようだが、彼には通じず、後から来た先輩社員が手伝った。
そのことがあって一層、「てめー、人間じゃねー」なんてキャッチフレーズを付けられ、彼の人間像を作ってしまった。
そのとき交わされた女性社員と先輩社員の会話が聞こえるようである。
悪意があって広められたかどうかはわからないが、そのことが社内中に広がり、彼のイメージを失墜させてしまった。
もっとも、こうした女性社員の口コミ攻撃にも大いに問題はあるが......。

彼を飯に誘い出し、それとなく聞いてみた。
「全く気がつきませんでした。多分何か他のことを考えていたと思います。」
真から悪い人間じゃないことは確かであるが、どうすれば少しだけ周りが見えるようになってくれるだろうか。 そうなってもらわなければ、彼はつぶされるかもしれない。
「人間の目が横に広がってついているのは、周りを良く見るためでもあるんだぞ。」
「なるほどですね。」
自分への示唆より、初めて聞くのか、道理の方を感心しているのである。

ある日、彼がコーチ役の先輩に質問をしたときである。先輩も忙しかったのか面倒だったのかわからないが、「そんなことまだお前が知らんでいいんじゃ。それより、ここのところをしっかりやっちょかいいんじゃ。」と怒鳴っている。
彼も簡単には引き下がらない。「しかし、そのことも考えながらやらんといけないように思いますが。」
「そんなこと関係ないんじゃ。」ますます声が大きくなっていく。

日ごろから彼は誰にでもよく質問をする。納得がいくまで引き下がらない。 議論もよくふっかけてくる。
「真理は何か。」「何が正しいか。」
対応の良し悪しは別にして、彼の探求心は素晴らしいものがある。
仕事の流れや縦横の関係、目的や背景など、仕事全体を理解し、納得するまで先へ進まない。

昨今、目先のことを要領よく手っ取り早く仕上げ、受け良く仕事をこなす手合いが多くなった。
しかし私は、本当に大事なことは何か、あるべき姿は何かと真理を追究し、仕事の本質は何かということを自分の中に練り上げておくことが、遠回りのようでどれだけ肥やしになるかわからない、と思っている。
彼は無意識のうちにそれを実践しているのである。
たとえ関係なくとも、先輩として一応は言い分を聞いてやるべきであろう。まして「そんなことまだ知らんでいいんじゃ」は、よけいなことであろう。 いつならいいというのだろうか。
そんなコーチのあり方にもてこ入れしなければならないが、今回は彼をなんとかすることを優先し、役割分担の見直しという理由でコーチ役を他の者に代えた。

私は、彼の意識を変えるには、まずはチームのメンバーが彼のことを小バカにしている意識そのものを変えなくては、と思った。 そこで、メンバー間で彼のことが話題に上るたびに、「お前らな、そうやって彼をバカにしているが、彼はいつか大化けするよ」と言ってやる。
事実、私はそう思っている。
探求心と集中力、これが人が成長する根幹だと思うからである。

(彼らは、一瞬、何かに気づいたような表情をみせている。)


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