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停滞する職場でのOJT

モチベーションの上がらない仕事のOJT

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メーカー(女性)  2014-03-25

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モチベーションの上がらない仕事のOJT

某メーカーの、ある文書系アプリケーションのサポート部隊で働いている。
そのアプリ(仮にXアプリとします)は10年程前に開発され、その当時は画期的なアプリだということで、企業を中心としてユーザーも相当獲得した。
私は当時はその開発部隊にいて、そこそこ忙しく、また仕事もやりがいがあった。でも、ほんの数年で情勢は変わり、あっという間にそのアプリは開発・販売終了となってしまったのだ。
その後、その開発部隊は30名から3名に縮小された。私と、開発当時から関わっている同僚、そしてもう1人は上司だが隣の課との兼務なので、実質的には2名と言っていい。
部署の名称もXユーザーサポート室と変更になって、私と同僚は細々とアプリのユーザーサポートを担当していた。細々とはいえ、そのアプリのユーザーは、会社のメインであるハード製品のお得意先でもあるためぞんざいにはできない。サポート止めました、とも言えない事情がある。
言ってみれば、死にゆくアプリのお守り役として塩漬けにされた日々。 でも、時々は理不尽なクレームや、海外からのわけのわからない質問などもあり、面倒なこともあるのだ。でも誰もその苦労をわかってくれない。せいぜい同僚と愚痴るしかない。何度か異動願いを出すも取り合ってもらえず、 モチベーションはさっぱり上がらない。当初一番アプリに詳しかったことが裏目に出るとは......。正直、他の部署に異動になった人達が羨ましい。

そんな時、頼みの同僚が病気で長期療養することになった。その欠員補充としてあてがわれてきたのが、入社3年目のAだった。
Aは、もちろん希望してきたのではない。本人の話によると、上司に嫌われて出されてしまった、ということだった。はなからやる気をなくしている。
しかし一応仕事はちゃんと覚えてもらわないといけない。下手な対応をすると二重クレームになることもあるので、そうなったら厄介だ。

Aには一通りOJTを行った。仕事量はこちらでコントロールできることではなく、無いときは、本当に何も無かったし、面倒な問合せが来るときは、なぜかまとめてやってくる。

Aはいつもどんよりとしていた。 芸能ネタと食べ物の話の時だけは元気になる。最近の若い子は(などと言いたくないのだが......)けっこう表情や態度に出す。でも気さくなところもあって「今度新しいお店がオープンしたみたいですよ、一緒に行きましょう!」などとよく誘ってくる。

そんなAのことは嫌いではなかったが、どんよりしている時は私も何となく気分が悪かった。

「なんか、やってらんないですよねー」Aはよくそんなことを口にする。
私もいけなかったのだ。最初の頃、「だよねー。報われないよねー」などと話を合わせてしまったものだから。
今だって、本音はそうなのだ。モチベーションを上げろと言われても無理なのだ。でも、じゃあ毎日だらだらと不満を言いながら仕事するのが楽しいかと言われると、全然そんなことはない。もう10年もこの環境で、なんとか自分をコントロールしながらこらえてきたのだ。
だから、毎日毎日こうやる気のなさを全面に出されると、いらいらしてくるのだ。
何度か「そのどんより感、こっちまで憂鬱になるからやめてくんない?」と言ってみたものの、その場は一応反省して行動を改めるものの、半日も持たない。「上司に嫌われて出された」というのはあながち外れていないなと思う。。。

そんなある日の夕方。その日はAと、駅前に新しくオープンしたイタリアンレストランに行く予定になっていた。帰り支度をすませマシンを落とそうとしたところで、問い合わせメールが入ってきた。メールは共有アドレスに来るため、部署の3人が見ている(もっとも上司はたぶん見てもいない......)

「10年前からXアプリを愛用しているが、このアプリでこういうことをしたいが、なかなか実現できない。どうしたらいいか」という、やや長めのメールだった。
この時間に厄介なメールを見ちゃったなぁ、という気持ちの反面、発売当初から愛用しているという言葉に、親近感もわいた。ずっと使い続けてくれているなんて、なんだかうれしい。開発に携わっていない後輩には、わかってもらえないかもしれないが。

問合せメールは、共有のメールボックスに入るので、Aも見ていた。
「このメール、私が返しておきますよ。先輩、どうぞ片付けちゃってください」と言うので、少し気にかかったが「そう?じゃあお願い」そう言って給湯室でコーヒーカップを洗って戻ってくると、「返事しときましたよ。さぁ、行きましょう」と言う。

え?もう?と思って、念のため返信メールを見ると、できないお詫びを述べただけのそっけない返事。私は愕然とした。
「Aさん、これはちょっとぞんざいじゃない?」と言うと、Aは意外そうな顔で振り返り、「え?いけませんでした?だってXアプリにそんな機能ないですよね」と言う。
「それはそうなんだけど、この人が実現したいのは○○ってことよね。それなら直接にはできなくても、データをExcelとかから取り込んだらできるよね」
「えー、それってむしろExcelの機能ですよね。範疇超えてるじゃないですか」
「それはそうなんだけど、でも10年も愛用してくださってるのに、そのくらいのサポートはしてもいいんじゃない?」
「えー、どうしちゃったんですか?急に熱血しちゃって、お店の予約時間過ぎてますから、もう行きましょうよ」

「...うんそうだね」と言ってそのまま会社を出ることもできた。そうしようかと迷った。でもそうしたら自己嫌悪におちいってしまうこともわかった。
ここは同調したくない、
「食事はこんどにしましょう。もう一度お客さまにメールを出して、こういう方法もありましたって言って」
「えー、冗談ですよね?」
「本気です。せっかく10年も愛用してくださってるのに、なんかこういう対応ってないと思うの」私は日頃出し忘れていたモチベーションを目一杯高めて言った。
「かなり丁重に謝りましたけど」
「そういうことじゃなくて、なんと言うか、お客さまが困っていることが解決できるってわかってるなら教えてあげたいじゃない」
「...わかりました。そこまでおっしゃるならもう一度メールしますよ。でも明日でいいですよね、明日の朝一番でしますから、ね、ね」

そこでしぶしぶ了解してしまうのが私の弱さなのだ、自分でもうんざりする。
結局その申し出に妥協してレストランに出かけた。食事中、メールのことについてもう少し話したかったのだけど、仕事の話をするなんてなんとなくやぼったい感じがして、言い出せなかった。私の中になんとなくもやもやした自己嫌悪が残った。

翌朝、Aは約束を忘れずにメールを出し直してくれた。
「あらためて社内で検討いたしましたところ、お客さまのお望みのことを直接行う機能はございませんが、以下の方法でしたら実現が可能かと存じます。ご参考までに...」

お客さまはこれを読んでやってくれるだろうか。最初から言えよ、とかえって怒っていないだろうか、それはわからないけど、ようやく私は心のつかえがとれてほっとした。

しばらくして、Aが顔を輝かせてやってきた
「先輩、あのお客さまからお返事が来ましたよ!」
メールを確認すると確かに届いていた。
「わざわざご丁寧に教えてくれて、本当にありがとうございました。私はこのアプリが大好きだったので、サポート終了と聞いて本当に残念でなりませんでした。さすがにもう乗り換えるべきかと思っていたところ、このような親身なご対応をいただいて、感激しました。正直、不便なところは多いのですが、他社製品の使い勝手はどうしても好きになれず、可能な限り使い続けたいと思っています」
私とAは顔を見合わせて声をあげた。 なんて嬉しいメールでしょう!

「昨日は先輩からメールを送り直せって言われて、正直なんでそんなことを言うのか、わけわかんなくて。でも、送ってよかったです。ありがとうございました」Aはそうぺこりと頭を下げた。

たった1通のメールだったが、私たちの日々の憂鬱が晴れ渡る感じがした。
お客さまから叱られることはあっても、感謝されたことなんて初めてだった。
心の中で「こちらこそありがとうございました。でも遅れてごめんなさい」の気持ちで手をあわせた。

あの時、メールを送ろうと言ってよかった。モチベーションが上がらないのは環境のせいばかりにしてたけど、自分のあり方を少し変えることで、環境も少しは変えられるのかもしれない、と感じた。 何より、電話やメールの向こう側の人とつながっているのだということを、Aにも実感してもらえたのではないだろうか。 頼りないOJTリーダーだけど、少しでもそのことがAに伝わってくれたらいい。

とは言え、喉元過ぎればなんとやらで、日常はうんざりする時間のほうが長く、Aはまたどんよりに戻ってしまった。私自身は、自己嫌悪におちいるような同調はやめよう、ささやかにそう決意していた。
OJTリーダーとしてはダメダメなのだろうと思う。もっとAに強く働きかけるべきなのかもしれない。でも今自分にできることは、自分までどんよりしないように自分を保つことだと思っている。正直、それだけでも精いっぱいだし。


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