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わからない状態に耐えること

あいまいに「わかりました」と言っています

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ナビゲート[ち]  2002-07-24

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あいまいに「わかりました」と言っています

私は中国で美術大学に通っています。
「教わる」という環境においては、外国語を使うところが特徴です。

外国語で授業を受けていると言っても私の場合は美大ですから、授業はデッサンなどの実技が中心です。
机に座って講義を聞いたりノートをとるような授業はあまりないので、言葉がそれほどわからなくても授業は受けられます(だからあまり言葉は上達しません)。
しかし人の意見や考えを聞かなくてはいけないし、理解するにはやはり「言葉」なしではできません。
デッサンや作品作りの中で出てくる言葉は日常会話では使わないものが多く、また日常的な言葉でも普段とは違う意味で使うこともあります。そういう言葉は辞書にもぴったり当てはまる訳が載っていないことが多いので、意味をだいたいの輪郭で捉えるしかありません。

外国で暮らしていると、日本では考えられないくらいあいまいに言葉の意味を捉えていることが多いです。
母国語なら誰かが離れたところでしている会話も、耳に入ってくれば自然に脳が反応してしまいますが、外国語はたとえ隣で誰かが会話していても、注意しなければ車の雑音くらいにしか聞こえません。そのため完全に無視することもできてしまいます。これは結構不思議な世界です。無音なわけではないし、確かに聞こえてはいるのですが、脳は動かず静かなのです。周りが騒いでいても、まったく別のことを集中して考えることさえ難しくありません。

きちんと理解しなければいけないときは、もう一度聞き直すかわかりやすく説明してもらわなければなりません。しかし、あまりわからないときでも「わからない」と言えないことがよくあります。「まだわからないのか」と思われるのも嫌ですし、さらに説明をされてわからないことが増えてしまうのも怖いからです。知らない言葉を理解するには、今まで知っている言葉を総動員させて新しい言葉を理解しようと全神経を集中させます。
それは「戦い」です。負けたら探している言葉は霧の中に隠れてしまいますし、相手をがっかりさせてしまいます。作業中などは「わからない」と言ってしまったことで始まる「戦い」に、向かう時間も勇気もありません。だから本当の意味はわかってないのに、ぼやっとした輪郭が見えた時点で「わかった」と言います。知ったかぶりはいけないのですが、作業中に「じゃあゆっくり説明しよう」と腰を下ろされても困ってしまいます。だから「本当にわかった?」と試されるのがとても怖い。これはあいまいにしておく傾向の強い日本人の(私の?)悪いところかもしれません。
でも、あいまいに把握したとしてもその言葉を実際に経験したあとで意味がわかるということがありますし、また、回数を重ねて聞くうちにしだいに意味が見えてくることもあります。逆にあいまいにしたまま埋もれてしまい、もう二度と聞けないということもあるので、ぼんやり見えかけているようなときにあいまいにしておくかどうかの判断は難しいです。

しかしこのようなあいまいな態度は、教えるほうにも不安を感じさせるのではないかと思います。
そのためか、ある先生は私がデッサンをしている途中に、描いている絵の脇に文字と図などを書いて説明してくれることがあります。またある先生は、何かを作ったりする作業で、私の下手な動作を見かねて替わってくれることがあります。
例えば、銅版画を作る際にニードルなどの道具も自分で作るのですが、それの研ぎ具合を聞くとします。すると、ここの部分はもう少し鋭角にしなければいけないなどと、まず言葉で説明を受けます。ところが先生は私がどこまでわかっているのか不安なのでしょう。すぐに「じゃあ、ちょっと貸して」といって見本を見せて削ってくれるのですが、そのまま終わりまで研いで完ぺきにしてくれるのです。もちろんそのほうが銅版は彫りやすいし楽ですが、研ぐ能力はいっこうにあがらない。そういうことがよくあります。 見本を示して教える方法はとてもわかりやすいのですが、2回も3回もそれをされてしまうと結局学ぶことができません。
「失敗は成功の母」と言うように、うまくできない体験をすることで考えて工夫する、そのうえで「こんなんもあるよ」「こうするともっとうまくいく」とアドバイスを受けるほうが身につきます。何よりもそういう学び方のほうが苦しいぶん、できるようになったときは嬉しいです。

日本で学んだり働いたりしている外国人の方も、私と同じように日本語の意味をあいまいにとらえていることがあるかもしれません。そのためうまく言葉が通じず、手助けしてやりたくなることもあるでしょう。
でも、外国人だからこそ必要な助けもありますが、だからといって特別扱いされるのはうれしくありません。まずは相手の話をしっかり聞いてあげてください。こちらから無理して伝えようとしすぎぬよう。 それは彼らにとっては「戦い」になるかもしれません。
とりわけ感覚的な言葉はもともと意味もかなりあいまいです。どんなに語学力が高くても、そのあいまいさは感じてしまうと思います。母国語でもお互いの感覚を伝えあうのは難しいのですから。多少のあいまいさは残っても、時間をかけて理解してあげてください。

言葉を理解しようとするとき「あいまい」なことが良いことなのか悪いことなのか、私にははっきり言えません。ただ「あいまいさ」に甘えすぎることなく、しっかりと相手の意図を理解する努力をしなくてはいけないと思います。それは「てきとう」であってはいけません。
でも、言葉がなくても案外気持ちは通じるものです。言葉に頼りすぎずしっかり向かい合えば、相手の気持ちが肌で伝わってくることがあります。そのときこそ「あいまい」にしていたことが却って功を奏すかもしれません。


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