No.26

業務マニュアルは定型フォーマットがわかりやすいか?

category:考察等

公開日:2005年 07月 12日
更新日:2021年 06月 01日

文字量が多い文書は敬遠される傾向があります。 確かにビジネス文書においては、冗長さを極力排除し、要点を簡潔明りょうに伝えるよう心がけるべきでしょう。
企業によっては、『定型フォーマットに基づいて、A4 1枚におさめる』といったルールを敷いているところもあるようです。そして業務マニュアルを作る場合にも、そのような方式を求められることがあります。
しかし、定型フォーマットに従うことで、果たしてわかりやすくなるのでしょうか?

定型フォーマットのメリットは?

わかりやすいかどうかを考えるとき、情報伝達の効率という側面と理解促進の効果という側面があると思います。
あらかじめ骨組みとなるフォーマットが決められていると、読み手はどこに何が書かれているかの見当をつけることができるので、伝達効率を高めるのに役立ちます。 また、制作過程のメリットもあります。枠組みに照らして情報を洗い出すことで、情報整理が進み、掲載内容に漏れがなくなるという利点も見逃せません。
業務マニュアルの中でも定型的な作業の場合は、フォーマットに沿って記載するやり方が適しているでしょう。『作業標準書』などがこれにあたります。

定型フォーマットの落とし穴

一方、気をつけたい点もいくつかもあります。

無理矢理に縮めていないか?

A4 1枚に納めるために、文章を無理矢理縮めようとすることで、かえってわかりにくい表現になっている場合があります。 例えば「○○による△△化の促進」「○○の実現に向けての△△的展開」など、熟語を連ねた体言止めの表現は社内文書によく見かけるものです。 文字数が少ない=簡潔というわけではありません。少し長くなってもいいから、もっと普通の日本語を使って文章を書いたほうがわかりやすいでしょう。

十把一からげにしていないか?

業務マニュアルの構成要素としては、しくみ、思想(理念や目的など)、手順、注意事項、基準・規格、帳票、事例......、などといったものが挙げられます。
業務の内容やレベルによっては、これらの何に比重を置いて表現すべきかが変わってくるはずです。

例えばセールスプロセスを例にあげるなら、「顧客登録」というプロセスと「反論・否定への対処」というプロセスを、同じフォーマットで解説するには無理があります。
顧客登録では、判断基準と手順が中心になるでしょうし、「反論・否定への対処」では、考え方と対応例に比重が置かれるべきでしょう。

また、クレーム対応のように、状況によって臨機応変に対応しなくてはならないような業務の場合、カタチを覚えることよりも行動基準となる考え方を理解してもらうことが大切です。
それを、以下のようにポイントだけを挙げたとしましょう。

  • クレームはお客さまの期待のあらわれと受け止めること。
  • クレームを貴重な情報源として共有すること。
  • クレーム対応によって、お客さまからの信頼をより強固にすること。
  • クレームは最優先業務として対応すること。
  • お客さまには会社の代表として対応すること。

確かにこの通りではあるけれど、正解だけを並べたところで読み手が納得できるわけではありません。
このような内容については、やはりある程度の文章も必要です。

無理矢理に埋めていないか?

あと、一見いかにも整理されているようで、よく見るとそもそも枠組みと内容が合っていない場合も見受けられます。
「業務の目的」という欄に目的以外のことが含まれていたり、「目的」と「ポイント」の内容が重複していたり......、欄を無理矢理に埋めようとして、全体として矛盾が生じているのです。こうなると、枠組みがあるだけに読み手は混乱してしまいます。

フォーマットを統一することは決して否定しません。しかし、何でもかんでもフォーマットありきで考えたり、十把一からげに扱うことは問題だと考えます。 また、フォーマットに従って書く場合は、ただ"埋める"のではなく、よくよく考えて書いてほしいと思います。
どうしても思いつかないときは空欄のままにしておくこと。混乱した情報で埋められているよりは、何もないほうがよほどマシです。

情報の伝達効率が高まるのは、あくまでも正しく理解されることが前提だと思いますので、そこを履き違えないよう気をつけたいものです。

author:上村典子kamimura

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